lCT支援員は学校の一員 |
「使いやすく、管理しやすいICT環境」をコンセプトに学校の情報化を推進してきた新宿区(東京都)。「授業のプロ」である教員目線でICT環境のあるべき姿を構想、整備を進めている。そこには、ハードやソフトウェアだけでなく、活用をサポートするICT支援員も含まれている。シンプルな環境と活用を支えるICT支援員、その活動をマネジメントし今後へ繋げる取り組みなど、教育委員会、ICT支援業務受託企業、ICT支援員の3者に聞いた。
新宿区は、平成21年度の文部科学省学校ICT環境整備事業を最大限活用し、校務用と教育用のネットワークや全教員へのシンクライアント型PCを整備した。これに加え、短焦点型プロジェクター・実物投影機・ノートPC・独自開発のIT教卓・黒板のホワイトボード化をセットにした「新宿版教室のICT化」の整備に着手。平成23年度までに、区立小・中学校の全教室のICT環境を刷新した。目的は「誰もが、いつでも、簡単に使用できるICT環境」を整え、今まで以上に魅力的でわかりやすい授業を実現するためだ。新宿区教育委員会教育支援課教育活動支援係の倉坪耕作氏は「ホワイトボードにプロジェクター画面を投影し、その上にマーカーで書き込む。子供のノートを実物投影機に映す。電子黒板よりもシンプルで簡単な操作を重視し、だれでも使える環境を整備した」と話す。
環境が整った後は、その稼働を高め、「使う」から「使いこなす」へ発展させ、よりわかりやすい授業を実現したい。そのためにはICT支援員という「人」のサポートが欠かせないと考え、平成21年度よりICT支援員の配置を開始。プロポーザル方式で業者を選定し業務を委託している。
ヘルプデスク2名、ICT支援員6名体制で区内の全小・中学校を含む42拠点を支える。校務用と教育用ネットワークの活用を含め、学校のICT活用全体を支援しているが、中でも授業支援や校内研修の支援を大切にしている。ICT支援員の谷口雄氏は「学校の一員という意識で、子供たちへの挨拶や言葉かけなどを大切にしている。気軽に声をかけてもらうためのコミュニケーションは欠かせない。ICT支援員間で共有している他校の事例紹介や、ちょっとした活用のコツなどを書いたチラシの配布など、積極的に働きかけており、授業の立ち会いの依頼も多い」と話す。
今後の課題は、ICT支援員配置の予算確保だ。これは、どこの自治体にも共通している悩みだろう。新宿区のICT支援業務を受託している(株)JMCでは、毎年の全支援件数や授業支援の件数、支援内容についてレポート資料としてまとめ、提出している。同社活用支援課の原正則氏は「年間支援件数は平成24年度が約12,800件、平成25年度は約13,900件と年々増加している。中でも、発展的な活用につながる授業支援の件数が4.3倍に増加した。支援活動の内容が変化していることが数値にも現れている」と話す。
倉坪氏は「支援件数の数値や、教育委員会が実施するアンケート結果からも、ICT支援員の重要性や学校の満足度が高いことが証明されている。これを財源確保の根拠として折衝することで、現在の体制を維持していきたい」と話した。教育委員会と受託企業のマネジメントとICT支援員の活動が一体となり、学校現場を支えている好例として、予算確保に悩む他の自治体の参考事例となりそうだ。
【新宿区のICT環境】
■校務用ネットワーク/校務支援システム、シンクライアント型PC、CMS型ホームページ、教員交流サイト、教材管理サイト
■教育用ネットワーク/新宿版教室のICT化(短焦点型プロジェクター、実物投影機、無線LAN接続ノートPC、IT教卓、スクリーン兼用ホワイトボード)、コンピュータ室の40台ノートPC、学校図書館システムの導入、電子模造紙、学習プリントシステム、フラッシュ型教材
【2014年8月4日】
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