研修では、基本操作の説明や活用法のアドバイスを行う |
北海道石狩市には、総務省・フューチャースクール事業及び文部科学省・学びのイノベーション事業の実証フィールドだった紅南小学校がある。国だけではなく、地域及び北海道の教育ICT活用の先進校として注目されてきた。現在、紅南小学校を含む石狩市内の小中学校で活動するICT支援員の小畠彬子さんに、これまでの取り組みや今後の展望について聞いた。
小畠さんがICT支援員として活動を始めたのは、紅南小学校のフューチャースクール事業から。当時は事業請負業者の社員という立場で学校に常駐しており、タブレットPCなどの障害対応や授業支援、教材作成支援など、学習活動におけるICT活用の支援にも積極的に関わった。
平成24年度にフューチャースクール推進事業が終了。以後、石狩市教育委員会の非常勤職員として活動している。支援対象は市内の全小中学校(21校)に拡大し、巡回及び要請対応型の活動に変わった。それに伴い授業支援や教材作成支援は減少、障害対応が中心となっているという。
一方紅南小学校では、教員のICT活用指導力が向上し、授業支援などの依頼が少なくなったものの、年数を経るにつれて機器のトラブルが多くなり、ハードディスクの交換などメンテナンス作業が増えている。
他の小中学校では、PC教室の活用支援が中心だ。機器が更新された学校では、基本操作の説明から活用法のアドバイス、授業支援など。急な障害対応を依頼される場合もあり、移動の公用車の手配に気を揉むこともある。
ICT支援員として活動する上で、3つのことを心がけている。
1つは、教員との打ち合わせを短時間で終えること。そのためには、依頼内容を素早く汲み取り、適切な対応を判断することが大切だ。2つ目は、支援しすぎないこと。ICT支援員は授業の中では黒子であり、子供達の集中力を削ぐことのないように、動き方にも気を配っている。3つ目は、言葉。教員や子供達に対して、専門用語を使わずに分かりやすい表現に置き換えて伝えるように心がけている。
気配りと共に重要なのがICTスキルだ。
タブレットPCを活用する場合、ネットワーク機器の知識や理解が求められる。無線LANのトラブルで授業がストップすることもあり、すぐに復旧はできなくても対応策を提示していくことができる基礎知識とスキルが必要だ。「授業のどこでICTを活用するのが効果的か」といったアドバイスも大切にしている。同じ教科・単元の授業でも、学級の状況や教員の考えによって違いが生じる。授業のねらいや流れを観察し、細やかなアドバイスに繋がるように経験を重ねて行きたいと話す。
教育委員会に所属してからは、指導主事から「授業の組み立て」や「学習のポイント」について助言を求められるようになった。そのため、授業について今まで以上に深く理解することができるようになった。外部団体委託方式にはない教委直接雇用の強みだ。
今後については、「市内の小中学校でこれまで以上にICTが活用されるよう、教員の実現したいことや授業設計などに合わせて、先進的実証校での支援経験を活かしてより良い活用方法を提案していきたい。そのことで、石狩市の子供達の未来に貢献したい」と力強い。
北海道のICT支援員の先駆者として、地域を牽引し、なくてはならない存在としての一層の活躍を期待したい。
▼所属 石狩市教育委員会・生涯学習部・学校教育課 ▼活動内容 教育委員会常駐・学校要請で対応 ▼支援対象 小学校13校・中学校8校・計21校 ▼ICT環境【紅南小学校】タブレットPC450台、電子黒板及び実物投影機(全普通教室)、校内LAN(無線LAN)、デジタル教科書、コラボノート、ジャストスマイルほか【市内小中学校】大型テレビ及び実物投影機(全普通教室)、PC教室、校内LAN、コラボノート、ジャストスマイルほか
【2014年5月5日】
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