「授業支援セット」上列左から:プロジェクター、携帯型スクリーン、下列左から:実物投影機、ビデオカメラ、ポータブルスキャナ、スピーカー、延長ケーブル |
「メンテナンスセット」左から:電動ドライバー、OAタップ、LANケーブル作成キット、工具セット、ケーブルテスター、LANケーブル、上:エアダスター |
ICT支援員を配置する方法は、自治体が臨時職員として直接雇用して配置する方法と、業務を外部に委託する方法の二つが存在する。本連載の2回目は、外部委託の先駆者として熊本市を拠点に活動している「NPO法人ICTサポートスクエア」の霍本(ツルモト)仁史理事長を取材した。
NPO法人を設立したのは平成21年。以来熊本県内の複数の自治体とICT支援員の配置業務委託契約を締結し活動している。(※1)
それまでは、企業の社員という立場でICT支援やヘルプデスク業務に携わっていたが、より専門性を高め、学校現場の多様なニーズに対応するためにNPO法人化。13名のスタッフ全員がICT関係の資格を取得している。主な資格は、マイクロソフトオフィシャルトレーナー(※MOT、現MCT)、VBAエキスパート、Excel表計算処理技能認定試験、Word文書処理技能認定試験、Windows操作技能認定試験、Webクリエイター能力認定試験など。1〜2級取得といった高いレベルの技術者が学校現場で活躍している。ICT支援員の業務の幅の広さや、求められる技術力の高さを垣間みることができる。
大規模自治体では教育センターに常駐し、約9000台のPC端末や電子黒板等の機器の活用支援、障害対応、校内研修支援、教材作成支援、校内LAN運用支援など、学校からの要請に対して日々対応している。
現場に行く際には「授業支援セット」と「メンテナンスセット」を持参する。
「授業支援セット」は、プロジェクター、携帯型スクリーン、実物投影機、スピーカー、スキャナなど、先生方の急な要望にも即座に対応できるように必要な機器を用意(写真上)。「メンテナンスセット」は、電動ドライバーや精密ドライバーなどの工具、LANケーブル作成キット、ケーブルテスター、エアダスターなど、機器やネットワークトラブルに対応するために必要な道具だ(写真下)。
■コミュニケーションと観察力が大切
霍本氏は「普段の活動で心がけることは、教頭や情報教育担当教員など先生方とよく話し、日頃のコミュニケーションから要望や悩みを感じ取ること、ネットワークやPC教室、校務用PCの利用状況をチェックして活用状況の変化を見逃さず、トラブルを小さいうちに摘みとること」だと話す。業務の中から対応すべき点に「気づく」ことの重要性をスタッフに意識させている。
■課題は契約方法
自治体が業務委託として契約する場合、契約相手方(業者)は、入札により決定される事がほとんどだ。入札方法は大きく分けて2つ。一つは、必要経費に加え、業務遂行力、経験や実績などを含めた企画提案内容を審査する総合評価方式。もう一つは、最低金額で入札した者を落札者と決定する競争入札だ。競争入札では、毎年同じ条件で実施した場合、落札額は下がる傾向となる。これがICT支援員という人件費を主とする事業で適用されると、給与が年々下がるという問題が生じてしまう。これは提供される支援サービスの低下にも繋がり、結果的に当初見込んだ業務が実現できず、ICT支援事業そのものが廃止された自治体も存在すると聞く。霍本氏は「高い技術力をベースに期待以上の業務を遂行していくことで、人件費の低下に繋がらないように取り組んでいきたい」と話す。
急速に進化する教育の情報化がより良い学びに繋がるには、ICT支援員の技術力と高い意識も大きな要因になる。受託団体はしっかりとした技術力と適切な支援能力を示す必要があり、自治体側はそのような受託者の能力を見極めて契約することが大切だ。
(※1)自治体によって「ICT支援員」「ヘルプデスク」など呼称は異なる。
【2014年4月7日】
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