佐世保女子高生殺害事件はあまりに悲しい。被害者のご冥福をお祈りしたい。我々教育関係者は、せめて教訓としたい。これまで命の教育、諸機関の連携、危機管理等、様々な論考がなされてきたが少し別の観点で問題提起したい。
(1)殺しちゃったんだけど
事件直後、「加害者が写真をアップしている」と騒ぎになった。検索するとすぐに、血まみれの手の写真と「殺しちゃったんだけど」「脳髄の色って何色だと思う?」などの刺激の強い書き込みが見つかった。大学生に聞くと多くが知っており「怖くて眠れなかった」と話す者もいた。
後にこの書き込みは、偽物とわかるが、この時点では、大半が本物だと思っていた。
(2)聞き取り調査
兵庫県で子供たちと話す機会があり、集まった子供に聞くと、高校生8人全員、中学生11名中8人、小学生9人中5人が「見た」と答えた。同じ日、小中学校の先生方約100人に聞くと3人だけだった。
(3)調査の意味
血まみれの写真を子供たちが、しかも現実の事件のものとして見ることは大問題である。子供たちに与える影響は計り知れない。
さらに問題なのは、これまでと逆の意味(子供たちの方がよく知っている)の情報格差。知らないでは対応しようがないし、子供たちを預かる身として、知らないでは済まされない。
もちろん、関西での私の周りの少数で日本全体を語るのは乱暴だが、問題提起にはなるだろう。
(4)ネットで流れてきた
子供たちに経緯を尋ねると「Twitterで流れてきた」「友達に聞いて検索した」「友達に見せてもらった」。大人の知らない場所で、彼らの「常識」が形成されているのかもしれない。
昨年から「ネット炎上事件」が続発している。マスコミでは、投稿した若者が、逮捕・退学・内定取り消しなど、社会的に厳しい制裁を受けたと報道しているにもかかわらず事件は続く。
私たち大人は新聞やテレビから情報を集めている。対して若者たちは、スマホ等のネット経由。学生に聞くと、「ニュースはYahoo!News等、ネット上で確認し、新聞もテレビも見ない」という。
私たちと子供たちの常識形成装置が違ってきているのかもしれない。
(5)これからのために
「メディア情報の真偽を見抜く目」を鍛えるメディアリテラシー教育が急務だが、さらに、私は、今回のような画像は子供たちに見せるべきではないと強く思う。フィルタリングの必要なゆえんだ。上のグラフは兵庫県の18歳未満のデータ(兵庫県調べ)だが、平成23年の7割強から平成25年は5割弱に急低下している。設定しない理由を聞くと多くが「設定したらLINEができなくなくなるから」と答える。社会的課題である。
この連載でも繰り返し述べているが、この種の問題は子供たち自身に考えさせることが重要だが、その一方、大人として強い姿勢での禁止や制限も必要である。試されているのは、私たち大人の側である。
【2014年11月3日】
関連記事