連載

教育におけるデジタルの可能性(最終回)―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

大学生がiPadでワークショップ

文教大学 教育学部 准教授 今田晃一  子どもが成長の段階で言語や社会のルールを学ぶ時、大人は常に最高の教師であり得る。ところが、iPadのような最新のデジタルツールが登場してきた場合、教育の専門家である先生方であっても、適切な活用からモラルまで、教え導く存在になることはなかなか困難である。





文教大学 教育学部 教授 今田晃一
振り返りムービー使用の最終場面(集合写真)
文教大学 教育学部 教授 今田晃一
大学生自作のiPad教材でアイスブレーキング

遊びから学びへ、自主的・協働的な学びへ

 そこで、モバイル端末を自在に使いこなすネオ・デジタルネイティブ世代であり、教育学を学んでいる筆者のゼミ生14名が、福島県平田村立蓬田小学校(真田秀男校長)の4年生有志36名と「iPadを用いたワークショップ〜遊びから学びへ〜」に取り組んだ。同校では都道府県の名称について社会科で学んでいるところであり、本ワークショップは、正規の授業の前後を充実させるとともに、大学生と子どもたちが一緒に「iPadを使った授業アイデア」を検討することを目標とした。

  まずは、アイスブレーキングとして児童3人に対して大学生1名のグループを編成し、1台のiPadを囲んで大学生が作ったiPad用教材(自身や出身都道府県の特徴)を用いた自己紹介から始まった(写真下)。その後、大学生がファシリテーターとなって、都道府県の学習アプリ「書き取り日本一周(開発:NOWPRODUCTION、日本地図から出題される全国の地名、県名、山などの書き取りゲーム)」に各グループで取り組み、協同または対抗など様々な方法によって楽しくゲーム感覚で学習することができた。最後には今後「授業で使いたい、あったらいいなと思うアプリ」について各グループでアイデアを出し合い、さらに全体で検討するという流れであった。また、ワークショップ全体を通して、映像優先脳といわれるネオ・デジタルネイティブ世代である子どもたちが作ってくれた「歓迎ムービー」、大学生が作った「予告編ムービー」と「振り返りムービー(写真上)」が効果的に使われ、見学者も含めて会場の一体感に一役かった。

  ワークショップの進行役を務めた同校の横山美智子教諭は「今年度、学校をあげて漢字検定に取り組んだところ、漢字の苦手な児童も意欲的に学習し、該当学年以上の漢字を進んで学ぶ姿も見られました。今回もこのワークショップをきっかけに、日本の地理に対して大いに興味をもったようです。iPadというデジタルツールを通して、単なる知識の習得だけでなく、自主的・協働的に学ぶ姿勢が見られました。新しいツールを使って学べることや大学生が一生懸命自分たちのために準備をしてきてくれたことによる喜びが、子どもたちの学習意欲をさらに高めています。学習に向かう姿勢に変化や高まりが感じられ、いつも以上に進んで学び合う姿がうれしい」とのことであった。

  次期学習指導要領は「育成すべき資質・能力」を中心として構成されるという。能力は、思考力を中心とする学力。資質は、自立的・協調的な人格。人格形成・学力形成に対して、デジタルはどのようなアプローチが可能なのか。その最適化をネイティブと協働し、追究したい。

【2014年3月3日号】

◆教育におけるデジタルの可能性―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

  1. 「NHKデジタルアーカイブス」の活用(130603)
  2. デジタルミュージアム構想と博物館の学び(130805)
  3. ワークショップにおけるiPadの有用性 (131007)
  4. 「朝日デジタル for school」で動画と記事の関連を学ぶ(140101)
  5. 教育におけるデジタルの可能性(140303)

関連記事

iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一(120702〜130304)

↑pagetop