連載

教育におけるデジタルの可能性(4)―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

「朝日デジタル for school」で動画と記事の関連を学ぶ

文教大学 教育学部 准教授 今田晃一  全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)は、文部科学省が求める学力のメッセージである。これからの子どもたちに、本当に必要な学力とは何かを考える貴重な素材だと捉えたい。教育におけるデジタルの可能性、デジタルの方が良いものとは何か。本連載のテーマからこの学力テストを見直してみると、そのあまりの相性のよさに改めて驚かされる。特に知識活用力を問う「B問題」は、ICTを活用して高め合い学び合う「協働学習」の理念、デジタルを活用した授業アイデアを大いに刺激する。



文教大学 教育学部 教授 今田晃一

児童が見つけた動画の工夫
(アップとルーズ)をクラス全体で検討

文教大学 教育学部 教授 今田晃一

授業の導入は、
当日の朝刊(紙とデジタル)の比較

 村橋直樹教諭(埼玉県越谷市立大沢小学校:校長 荒井一郎)は、4学年国語『アップとルーズで伝える』のまとめの学習で「朝日新聞デジタル for school」を利用した。本単元は、「テレビや新聞記事では、受け手が知りたいことは何か、送り手が伝えたいことは何かを考えてアップやルーズの写真を撮ったり選んだりしていることを学び、写真などを使った説明文の書き方を身に付けること」を目標としたもの。得た知見をもとに、次単元「仕事リーフレットづくり」につなげる授業展開である。授業は3人1組のグループで、当日の朝刊紙面とデジタルの比較から始まった(写真(下))。その後各グループでiPadで自由にデジタル新聞を閲覧し、興味をもった記事については深く検討する。児童たちは、デジタル新聞には動画がついていることをすぐに発見する。興味をもった動画は楽しみながら何回も視聴するので、記事と動画の関連を考える学習活動は自然に深まっていく。動画にもアップとルーズがあり、そこから「筆者が何をどのように説明しているのかとらえる」という課題に対して児童たちのワークシートは次々と、うまっていく。

  「朝日新聞デジタル for school」は、学校向けの記事やコラムを厳選して再編集しており、事件や事故などのストレートニュースの記事数は絞り込んで、楽しいイベントや微笑ましいエピソード等の記事が多い。iPadがWi‐Fiにつながった時、いきなり検索エンジンではなく閲覧するサイトを限定し提案することは、それを選ぶ授業者の感性の表出でもあり、その価値観、感覚は間接的に学習者にも伝わるものである。

  本時では「かわうその赤ちゃん」の動画を共有し、児童はその映像そのものにもやさしい気持ちになれたという(写真(上))。デジタルを使う必然性のあるよい研究授業であったと、指導された先生方からも高い評価を得られた。初任者教員である村橋先生は、学力テスト第6学年国語Bの「打ち上げ花火のリーフレットづくり」の問題から本時の着想を得た。それはグループでの編集会議を経て出されたA君とB君の意見を参考にして続く文章を作成せよ、という問題であり、これこそデジタルで臨んだ方がよい題材だとひらめいた。学力テスト、コンピテンシー(能力)、デジタルの3者をつなぐ授業デザインは、どうやらデジタルネイティブ世代にはしっくりなじむようである。

【2014年1月1日号】

◆教育におけるデジタルの可能性―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

  1. 「NHKデジタルアーカイブス」の活用(130603)
  2. デジタルミュージアム構想と博物館の学び(130805)
  3. ワークショップにおけるiPadの有用性 (131007)
  4. 「朝日デジタル for school」で動画と記事の関連を学ぶ(140101)
  5. 教育におけるデジタルの可能性(140303)

関連記事

iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一(120702〜130304)

 

↑pagetop