連載

教育におけるデジタルの可能性(3)―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

ワークショップにおけるiPadの有用性

文教大学 教育学部 准教授 今田晃一   反転学習に象徴されるように、インターネットとデジタル技術の進歩にともない大学教育は様々な視点からの質的変換が求められている。筆者らは2010年からコミュニケーションツールとしてのiPadのよさを活かす教育方法を模索してきた。そのひとつが、人と関わり楽しく作り(創る)ながら学ぶ、という教育系のワークショップの試行である。




参加者に恥をかかせない「iBooks Author」と「iMovie」

ワークショップ

達成感あふれるデジタル絵本実演後

ワークショップ

実演したデジタル絵本(iBooks)の一部

  本学教育学部心理教育課程の学生は、ピアジェの構成主義やヴィゴツギーの社会構成主義等の理論を学んでおり主体的に学び合うことに関してモチベーションは高い。「デジタル教材論(幼稚園免許対象選択科目授業)」では、そのねらいを「幼児教育におけるデジタルの可能性を追究する」とした。既存の保育アプリの検討、オリジナルデジタル絵本(iBooks:iPad用電子書籍)の作成、幼稚園での実演等を通じて適宜、対話と討議を重ね幼児教育の現場にマッチした新しいiPadおよびデジタルの活用アイデアを創りだすのがめざす目標だ。

  まずは無数にある既存の保育・知育・教育用iPadアプリの中から各自お勧めの1本を紹介する。議論が進むにつれて最新技術を駆使した大作から、シンプルな作品に関心が移っていく過程が興味深い。

  次に、学生がオリジナルのデジタル絵本をiPad用の電子書籍作成ツール「iBooks Author」を用いて作成する。このツールは誰が作ってもそこそこ美しく見栄えのよい作品ができる(写真(下))。ワークショップでは、参加者に恥をかかせないことが大原則だ。心をこめて作品づくりに励み改善を重ねれば、センスや技能が劣っていても美しく仕上がる。このとき学習者は夢中に取り組む。下に手厚く。この開発理念に改めて敬意を表したい。

  完成したデジタル絵本を幼稚園で実演する際もiPadのビデオ編集アプリ「iMovie」を活用する。「iMovie」には、専用のBGMが付いた1分程度のテンプレートが12種類用意されており、画像、動画、キャプション等を配置するだけで誰でもが一定レベル以上のムービー作品をつくることができる。絵本実演の様子を園児と終了直後に鑑賞することができるとともに、ワークショップ自体の振り返りにも有用だ。(写真(上))

  振り返りの結果、現時点では幼児教育におけるデジタル、特にiPadは主活動と主活動の間などの細切れの時間での活用が有効であること。内容的にもブックトーク等、サブ的な使い方が目の健康の配慮からも有効ではないかという意見に到った。当初はiPadの万能性で盛り上がったが、卒業生(幼稚園教諭)の冷静な一言が議論を新しい方法へと導いた。想定した結論がよい意味で裏切られることもワークショップの醍醐味だ。

  iPadによる新しい学びのデザインを、楽しみながらさらに追究したい。

【2013年10月7日号】

◆教育におけるデジタルの可能性―文教大学 教育学部 教授 今田晃一

  1. 「NHKデジタルアーカイブス」の活用(130603)
  2. デジタルミュージアム構想と博物館の学び(130805)
  3. ワークショップにおけるiPadの有用性 (131007)
  4. 「朝日デジタル for school」で動画と記事の関連を学ぶ(140101)
  5. 教育におけるデジタルの可能性(140303)

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iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一(120702〜130304)

 

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