携帯電話、スマートフォンの問題は、子どもたちが一番よく知っている。大人の決めつけや、一方的な規則の押しつけでは、この種の問題は解決しない。実は「答え」も子どもたち自身は知っている。今回からしばらく、子どもたち自身の携帯電話、スマートフォン対策で成果が上がっているものを記載していく。我田引水だがまずは、私が市教委指導主事として関わった大阪府寝屋川市の事例から紹介する。
■寝屋川市で中学生サミット
寝屋川市では、平成19年から、公立全12中学校の生徒会執行部員が集まり、寝屋川市中学生サミットを年2回開催している。平成22年12月の話し合いのテーマは携帯電話。事前打ち合わせで、その中心議題の一つは、「メールで眠れない」ことである。当日の話し合いは非常に盛り上がった。
「眠くなっても途中で終われない」、「自分で終わるのは何となく気が引ける」、「やめるきっかけがなくて、気づいたら3時」、「寝落ちするまでずっとやっている」…。
■メール終わらせ言葉
そこで彼らは、「寝屋川メール終わらせ言葉」を決め、寝屋川市全体で広めて、メールを終わりやすくしようと考えた。
「ZZZZZ」、「羊羊羊」「お母さんが怒ってる」など様々な案が出されたが、多数決で決定したのは「返信不要」。
各校に持ち帰って、朝礼や生徒会新聞で全校生徒に伝えて、寝屋川全体に広く普及させようということで散会した。
■広まらなかったが…
約1ヶ月後の成果報告会。どの学校からも「返信不要」は全く広まらなかったと報告があった。
彼らはさぞがっかりしているだろうとなぐさめようとしたが、妙にニコニコしている。詳しく聞くとある学校の生徒会長が発言した。
「『返信不要』は広がらなかったが、『みんな、夜、眠れなくて困っている』とわかり合えたから、『もう寝よう』とか『○○時になったらメールはやめよう』とか言いやすくなった」
つまり、言葉自体は広まらなかったが、困っているから何とかしたい、その気持ちがみんなに伝わったというのである。
■自分たちでルール作り
困っている気持ちを共有できたら、あとは簡単だ。自分たちに合ったルールを自分たちで決めたらいいのである。子どもたちは実にうまくルール設定していく。その場にいた生徒に聞くと「『おわり』と書いたらメールは終わりというルールを作った」という。「返信不要」を「おわり」に替えた。ある生徒は、12時になったら終了を規則にした。「すぐに終われないこともあるけど、『あ、もう12時回った』なら書きやすい」という。
そういうことか、と思った。
思い切って、彼らに任せられるかどうか。私たち大人に必要なのは、そのあたりを決意する勇気だと感じた。私の原点である。
【2013年10月7日号】
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