文部科学省は、新しいデジタル文化の創造と発信をめざした「デジタルミュージアム」構想を示した(2007)。デジタル化された文化資源情報がデータベース化され、インターネット等によって配信がなされていけば、新しい「デジタル文化」として新たな価値と使命を創造できる、としている。
現在、多くの博物館は収蔵品のデジタル化を精力的に進めるとともに、資料の収集や展示だけでなく、学校教育での活用に留意した教員研修等も積極的に展開している。
教員研修における実物(アナログ)と |
公式アプリとiPadminiの連携による現地学習 |
国立西洋美術館(東京都:上野公園)は、教科書に掲載されているような世界的な名画の数々を含め、ほとんどの展示品が撮影可能である。そのため筆者の授業(教育メディア論)でも、毎年国立西洋美術館のデジタルコンテンツを活用した「事前学習」およびタブレット型情報端末を用いた「現地学習」のあり方について検討している。
同館では2012年度からスマートフォン用の公式アプリである「Touch the Museum(iOSおよびAndroidに対応)」が提供され、iPadミニとの連携により現地学習に楽しさとわくわく感が加わった(写真(下))。博物館を含めて修学旅行や社会見学など、フィールドワークをともなう学習においては、現地、実物に出会うまでのストーリーづくりが重要だ。デジタルアーカイブスの充実により博物館の事前学習の可能性が飛躍的に高まっている。
国立民族学博物館(大阪府:万博記念公園)では、毎年夏休みに日本国際理解教育学会と連携した「博学連携教員研修ワークショップ」を開催している。2013年度は「学校と博物館でつくる国際理解教育‐センセイもつくる・あそぶ・おどる・たのしむ」をテーマに、「歌と踊りで語りつぐ南の島の物語3」「『みんぱっく』で世界と教室をつなごう!」「ものづくりとiPad を用いた現地学習」など計7つのワークショップが用意されている。山田幸生教諭(奈良県葛城市立磐城小学校)はワークショップで、事前学習としてシンメトリカルなアイヌ文様の切り絵を行い、小さな額縁の飾り物を製作する。
その後アイヌ展示に移動して実物と出会い、木村慶太教諭(立命館守山中学校・高等学校)によるiPadの機能を活かした現地学習のミニ実習を受けるという内容である(写真(上))。現在、博物館では、学校教育との積極的な連携が図られている。
博物館は、モノという実物(アナログ)を媒体とした教育メディアであり、モノとそれに関わるさまざまな情報を収集する情報機関(デジタル)でもある。学びをひろげ、つなげる博物館独自の学習スタイルは、デジタルの有用性を理解し活用することで、感性(視覚、聴覚、触覚、臭覚)をフルに刺激するダイナミックな授業づくりを促進する。
【2013年8月5日号】
◆教育におけるデジタルの可能性―文教大学 教育学部 教授 今田晃一
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