1999年に発刊された中島誠一著『触覚メディア』は、10年以上も前から「触覚を制するものがメディアを制する」として、現在のiPadの隆盛を予言した。iPadが登場して、従来リモコン等で主に使用していた親指(おおよその決定)から、人差し指(繊細な操作による指示・支配)によるタップ、ピンチアウト等へとユーザーの操作方法がシフトした。
村山大樹講師(学校法人武藤学園大袋幼稚園:園長竹村厚子)は、絵本の読み聞かせの中で、iOSアプリ『ぴよちゃんのおともだち(学研教育出版:2012年度電子書籍アワードにおけるコミック・絵本賞受賞)』に対する園児の反応に注目している(写真1)。「粒子法という技術を応用したこの仕掛け絵本は、目や耳による楽しさに加え、タッチパネルを通じて得られるなめらかな触感と、はじく・なでる等の指示どおりに反応する快適な操作性によって、園児の感性そのものが刺激されている。これは五感を重視するモンテッソーリ教育における、触感をさりげなく刺激する新しいあり方ではないか」と、村山氏は語る。
【写真2】授業の振り返りをiPad用 iMovieによる動画で発表する |
【写真1】人差し指でiPadアプリの 仕掛け絵本を楽しむ |
横山美智子教諭(福島県平田村立蓬田小学校:校長真田秀男)も、感性に留意した授業づくりに取り組んでいる。生活科の「まちたんけん」の授業では、1班5〜6人で1台のiPadをもってフィールドワークに出かけ、写真を撮ってiPadアプリ「iMovie」で編集し、授業参観では、各班が保護者に向けて学習の成果を動画で発表、という大学生なみの授業スタイルを小2で実現している。横山氏は、「iMovieは、まだキーボード入力を学んでいない低学年でも文字入力ができ、直観
的に快適に動画編集もできます。またこのスキルは、他教科でも授業で最も大切な『振り返り』を楽しくし、学習者にも自信をもたらしてくれます(写真2:算数タングラムでの事例)」という。主体的な学習には、知識だけでなくどこかに感性や情動が刺激される場がほしい。感性に留意した授業から得られた微かな兆候を注視し、授業デザインに活かしたい。
◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一
(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して
進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)
【2013年2月4日号】
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