連載

iPadの教育活用(4)―文教大学教育学部准教授 今田晃一

iPadの教育活用

アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ

 例えば算数では、個人解決と集団解決という学習の場面がある。また算数には、パターンブロック、タングラム、ジオボードなどの「ハンズオン・マス」という触覚に留意した学習方法がある。「ハンズオン・マス」は、美しさ、面白さ、楽しさを追究したもので、教具というより学習者が主体的に自ら手で操作して取り組む学習教材の一つである。

授業にメリハリとリズムを

  ここで紹介する授業は、図形に関する感覚を養うことを目的としたもので、タングラムを用いた実習生(村橋直樹:文教大学教育学部4年生)の研究授業である。個人で木製のタングラムの課題に取り組み(アナログ)、後半iPadアプリのタングラム(デジタル)で別の課題にグループで取り組む授業である(写真下)。実習生の授業というと、とかく単調になり、どうしても集中力を欠く児童が出てくる場合が多い。しかし本授業では、アナログとデジタル、個人と集団、それぞれの活動にメリハリがあり、楽しさの中に子どもたち同士の高まりのある充実した授業となった(埼玉県越谷市大沢小学校:校長 荒井一郎)。

iPadの教育活用
 
iPadの教育活用
前半はアナログ、後半はデジタルで
タングラムの課題に取り組む

  筆者は2012年9月中旬に、韓国のデジタル教科書研究指定校(九一小学校:ソウル市)の授業を参観する機会を得た。新任の先生による6年生社会「国会のしくみ」の授業であった。授業は、電子情報ボードによる課題の共有化・焦点化、タブレット型PCを用いた授業用専用サイトへの個人意見の投稿と共有、そしてグループによる討論というサイクルが数回繰り返された(写真上)。若くて溌剌とした先生の授業は、とにかくリズミカルでテンポがよく、45分間誰一人、集中力を欠く児童が見られなかったことが印象的であった。

  これからわが国においても、デジタルネイティブの世代が教壇に立ち始める。若い豊かな感性(流行)を伸ばしつつも、ベテラン教師の妙技(不易)はしっかり教えて伝える。あたたかい眼で次の世代を育てようとしている韓国、日本の先生方に敬意を表したい。

 

◆iPadの教育活用―文教大学教育学部准教授 今田晃一

(1)協働学習につながるグループ学習に活用(120702)
(2)授業デザインの要は「スキル」から「感性」へ(120806)
(3)「iBooks Author」で主体的な学びと安心感(120903)
(4)アナログとデジタル 不易と流行をつなぐ(121008)
(5)Facebookを活用して 進路指導・キャリア教育(121105)
(6)教育方法の質的な転換の兆候を実感(121203)
(7)感性を活かす授業づくりを(130204)
(最終回)登校刺激としての iPad in 相談室(130304)

【2012年10月8日号】

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