仙北屋正樹先生 |
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■生徒の第一希望を優先・効果上がる
同校では、1学年で職業調べや職場訪問を、2学年では長期(5日間)の職場体験を、3学年で高校訪問を行なっている。1日だけの職場体験も多いなか仙北屋先生は、それでは効果が薄いという。
「それまで行なっていた一日だけの職場体験では、生徒がお客様扱いでした。親しみやすさからコンビニエンスストアを望む生徒も少なくありません。しかし実際に朝9時から夕方5時まで働くと、3日目くらいからつらくなってきて、厳しさがわかる。苦労した分だけ生徒の中で体験が意義を持ちます」。
高校進学時に総合学科を選ぶ生徒が増えるなどその効果は現れている。保護者の評判も上々で、体験終了後、「働くことが嫌」と答える生徒はいない。
「特に男子生徒に多いのですが、以前より優しくなったり、家のことを手伝ったりと家庭でも変化が見られるようです。その変化がいつまでも続く生徒ばかりではありませんが、無駄にはなっていないと思います」。
教員になる前の3年間、一般企業の営業職で外回りをした経験を持つ仙北屋先生によると、キャリア教育の狙いの一つには児童のコミュニケーション能力を育む狙いもある。
「“ニート”には、働きたくないのではなくて、働きたいけどコミュニケーションがとれないという側面もあります。職場体験にはマナーや異世代との交流、言葉遣いなども求められる」
興味の持てる新鮮な場に生徒は積極的に質問をする。中学生の方が大学を卒業する学生より、適応し易いという。
「私達教師は路線を引いただけ。肉付けは生徒達です。今では口コミで先輩から後輩へと生徒の間で伝えられ、仕事について普段から考える良い機会になっています」。
取り組みの中で、特に大切なことは「生徒の第一希望を通す」ことだと仙北屋先生は語る。
「生徒のことを考えると、第一希望をかなえてあげることが一番効果的。手間はかかりますが、手をかければ子どもは返してくれますから、苦になりません。体験を通じて働くことは良いことなのだと夢を持って欲しい」。
仙北屋先生は更に一歩踏み出した授業展開を考えている。
「これからは職場体験で得たこと感じたことを文章で発表する、生きた国語の授業を行なっていきたいですね」。
職場体験を一つの題材に、各教科へ職場体験を還元できるよう、同校では今後もキャリア教育に取り組んでいくという。
【2005年7月9日号】
【キャリア教育】