薄井 俊行氏 |
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■高校生向けテキスト作成
今の子ども達を取巻く消費生活環境やそれに伴う金銭感覚は昔と比べて激変している。ATM(現金自動預け払い機)にカードを入れれば、いつでも好きなだけお金が引き出せると思っている子もいる。お小遣いやお年玉の額も変わった。若年層の多重債務者も少なくない。同協会では公益事業に積極的に取り組むために社会教育推進室を立ち上げ、社会教育の分野でも生活者をサポートする。教育の現場に対する支援もその一つ。
「これまで学校では、お金について教えることを避けてきたように思います。しかし、今日の社会情勢から考えると、お金に対して若いうちからしっかり理解してもらう必要があります。学校のテキストは金融や経済の仕組みや制度といった全体の話が中心になりがちで、お金について生徒自身の生活とのかかわりの中で捉えていません。また、何を教えたいのか、何を学んでほしいのかを示した教材がなく、学校の先生方も取り組みにくい面がありました」
同協会で3月に作成した「10代から学ぶパーソナル・ファイナンス」では、個人の家計管理における貯蓄・投資、ローン、クレジット、保険、年金など、個人の生活に深くかかわる領域をカバー。生徒の目線でわかりやすく解説されている。学校には無償で提供している。
「今買いたいものが必要(ニーズ)なものなのか、欲しいもの(ウォンツ)なのか、区別ができない人が増えてきました。子どもはどうしても流行しているものやTVコマーシャルで紹介された商品を欲しくなってしまう。『必要なものや欲しいものを買うことができるお金が、いつも十分にあるとは限らない…生活をしていく上で目標を決め、これにともなうお金の使い方を考え、実行していくことを、“意思決定”という』(同テキスト)。こうした・お金を使う・という行為についても、ワークシートを活用しながら学べるようになっています。
本書は、近い将来、生徒自身に必ず訪れる様々なライフイベント(進学、就職、起業、結婚、住宅取得等)に向けた備えをファイナンスという視点から考えることができるようにすることをコンセプトに作られています。現在、テキストの指導マニュアルを作成しており、今夏中には完成させて夏、秋頃には同マニュアルを利用した先生方へのセミナーを開きたいと考えています。一人でも多くの先生方に、生徒が社会に巣立つ前にお金について学ぶことの必要性と重要性を理解していただけるよう普及・啓発していきたいと考えています」
同協会では、要請があれば学校教育の現場へFP(ファイナンシャル・プランナー)を派遣した金銭教育や同テキストを利用した授業を行なっており、現在、実施校を募集している。
【2005年6月4日号】
【キャリア教育】