特集:新学習指導要領に備える 

第43回全日本教育工学研究協議会全国大会

パネル討論では学校情報化先進校と先進地域が各校各地区の取組を語った
パネル討論では学校情報化先進校と先進地域が各校各地区の取組を語った

学校情報化先進校 先進地域を表彰

【1面より】

第43回全日本教育工学研究協議会全国大会が和歌山市内で開催され、当日は学校情報化先進校・先進地域が表彰された。これは、情報化の推進における以下4つの観点「教科指導におけるICT活用」「情報教育」「校務の情報化」「情報化の推進体制」で一定の基準に達した学校や地域を日本教育工学協会(JAET)が認定するもの。現在350校が「学校情報化優良校」(以下、優良校)として認定されており、そこから特に優れた学校を「学校情報化先進校」(以下、先進校)として認定。また、「優良校」が8割以上になった地域を「学校情報化先進地域」(以下、先進地域)として認定している。認定期間は3年間。その後再度審査を受ける。

今年度は、先進校として次の計5校が認定を受けた。▼教科指導=日野市立平山小学校・つくば市立春日学園・春日井市立出川小学校▼情報教育=大阪市立昭和中学校▼校務の情報化=高森町立高森中央小学校

先進地域は次の3地域を認定した。▼日野市教育委員会▼草津市教育委員会▼武雄市教育委員会

なお先進地域は表彰時いずれも優良校の割合が100%に達した。

先進校・先進地域パネル討論

学校情報化先進校から春日井市立出川小学校(教科)、大阪市立昭和中学校(情報化)、高森町立高森中央小学校(校務)、日野市教委(先進地域)、審査員として新地辰朗教授(宮崎大学大学院)が登壇。

進行役の堀田龍也教授(東北大学大学院)は「情報活用能力は言語能力や問題発見・解決能力と同様に学習の基盤になる力として新学習指導要領で取り上げられた。学校情報化認定は、これを意識して行っている」と述べた。

<先進校>

■春日井市立出川小

春日井市では、大画面提示でわかりやすく授業を進め、最後に振り返るという授業を全校で行っている。平成26年度から1人1台情報端末環境を整備した出川小では、成功のポイントについて、早期から校務情報化を行っており教員間の情報共有が浸透していた点は大きい。全教室に提示環境が整備されており授業で日常的な活用が浸透していたことも基盤となり情報端末の活用も円滑に進んだ、ごく自然に段階的な整備となっていた、と話した。さらに、低学年では教室に提示環境を2種類整備。1画面は教員用PC画面、1画面は実物投影機としており、ICTに不慣れな教員にもわかりやすい環境だ。

■大阪市立昭和中

大阪市教育委員会ICT活用事業のモデル校として1人1台の情報端末を整備。多様な実践を積んでいる。国語科で情報活用能力を3年間通して育成し、各教科の下支えとなっている。自宅にも持ち帰り可能にしており、制作に時間のかかるプレゼンテーションなどに取り組んでいる。

意見交換や感想の蓄積には教育用SNSを活用。リアルな情報モラル指導にもつながった。

■高森町立高森中央小

町長の方針で教育プランに教育環境整備の重要な要素としてICT環境整備を位置付け。平成24年度から段階的に取り組んでいる。教員の多忙感軽減に向けて校務の情報化により校内教員のチーム力向上を意識。校務の情報化委員会を設けて出張命令や年休処理などの管理系事務作業を電子化。教頭の負担軽減につながるとともに、迅速な対応や判断、危機管理などにつなげた。

校務の情報化の効果は、1日あたり10分程度、月10時間程度。教員に余裕が生まれて授業準備や個別対応にかける時間が確保しやすくなり、児童の学力向上にもつながった。

講評

先進性のみではなく「日常的で安定したICT活用」と「教育の質を高めようとするマネジメントにどうICTが機能しているか」を評価している。学校長が、取組の特色や成果を具体的に説明できる点がポイント。

<先進地域>

■草津市教育委員会

4800台の情報端末を整備して草津式アクティブ・ラーニングに取り組み、「話し合って一般化」することを追求。テレビ会議による遠隔授業やオンライン英会話、ロボットを使ったプログラミング学習など新たな取組にも積極的に取り組んでいる。草津市ではICT環境整備に向けて進める中で、調整・連携をより円滑にする目的で、平成27年度に学校政策推進課を新設。学校が新しい取組に着手する際には教育委員会が積極的に出向いて共に考え、支援。学校との信頼関係の構築が教員の取組を後押ししている。協力的な学校長が増えており手応えを感じている。

講評

教委を訪問してビジョンを聞き、教委の思いをどう学校が受け止めて実践しているのかを評価している。手応えがあるからこそ夢をもって地域ぐるみで取り組むことができる。それを実現している点が素晴らしい。


堀田教授は「先進地域として認定されたつくば市、日野市、草津市は共通して、首長部局と連携した課を設置している。首長の決断は大きい。課ができたことで学校任せ、現場任せにせず、学校に積極的に出向くことができる。共に学ぶ姿勢がポイント。今後、教育の情報化は、働き方改革にもつながるものとしても重要」と述べた。

学校情報化認定は、新学習指導要領に向け、チェックリスト20項目の見直しを図る。なお次年度から、先進地域は「認定」制度に切り替える。

 

【2017年12月4日】

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