教育委員会対象セミナー・大阪 ICT機器の整備計画/校務の情報化

第26回教育委員会対象セミナー「ICT機器の整備計画/校務の情報化の推進」が10月30日、大阪で開催され、西宮市や堺市、宝塚市がタブレットPCや校務支援システムの整備について、大阪市立本田小学校は、タブレット端末整備後の学校の取組について報告。奈良教育大学の小柳和喜雄教授は、アクティブ・ラーニングとICT活用について説明した。
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アクティブ・ラーニングは目標を整理して取り組む 奈良教育大学・小柳和喜雄教授

奈良教育大学・小柳和喜雄教授
奈良教育大学
小柳和喜雄教授

"新しい学び"に4つの歴史

奈良教育大学の小柳和喜雄教授は「新しい学び」とタブレット端末等を活用した授業の工夫について講演した。

「ICT活用」には、2つの側面がある。

一つは、学力向上や学力保障を目的にした個別指導や一斉指導など教科中心の活用。もう一つが、教科を超え、社会で今求められている力‐21世紀型スキルを始めとするコンピテンシーの育成を助ける活用だ。

現状では、知識技能の習得や興味関心を高めるためのICT活用が多いが、汎用的な能力育成につながる協働での問題解決やその過程のメタ認知などでのICT活用が増えつつあるのが今の状況だ。

「新たな学び」の実現に向けた取組が進んでいるが、これまで数回にわたり「新たな学び」と表現される内容には変質があった。

最初の「新たな学び」は「総合的な学習の時間」が始まった時期で、教科横断的な力。

第2世代は、PISAショックを契機に認識が新たになった「B問題」などPISAが求める力。

第3世代は新たなテクノロジーの導入により生まれる学習の広がり。

現在は第4世代。これは学びそのものの原理を考えるもので、大きく分けて3つ。

まず、個々人の状況に応じて課題を変える「アダプティブ・ラーニング」。次に、自ら問いを作り出し主体的協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」。活動はしていてもただ受動的に課題をこなしているのはアクティブ・ラーニングとはいえない。

3つ目は、現代的かつ新たな課題に対して、これまでの知識や経験を踏まえて解決方法を見つける「ディープ・ラーニング」。

これら3つの学びには重なりがあるものの、1つめ、2つめの学びを目指す、あるいは3つ全ての学びを目指すなど、今抱えている課題を分析してどこから取り組み始めるのか、今どのような学びを視野に授業を行っているのかを意識化していく必要がある。

学習者の能動的な学びを起こす仕組みである「アクティブ・ラーニング」は多くの方向性を持つ。「活用指向」「習得指向」「探求指向」「表現力・コミュニケーション力指向」があり、さらに課題やテーマが複雑で発展的な場合、課題やテーマが明確な場合、最終目標を「解決」とするか「提起」とするかなど様々な形態が混在。これらはグループワークやディスカッション、体験学習、問題解決学習で取り入れられている。それらの整理が進むと実践もより進む。

また、同じ授業内容、学習の取組であっても道具が変わると違って見えることがあるのもICTを活用した学習の特徴だ。

ICTを利用して生徒の考え方を「見える化」していくことで、自分の立ち位置や目標点を「見える化」できる。タブレット端末に生徒自身が自らの学習を記録、進度に応じて振り返り、次回の学習に繋げるという学び方もある。タブレットを通した学習にはゲーム性もあり、競争も起こる。

これら新しい学びを成功につなげるには、合意形成の過程が必要だ。ICTを使うと効果的な部分はどこか。今までやってきた授業方法の延長線上としてICTの活用を考えていくことから始めると合意を得やすくなる。(講師=奈良教育大学・小柳和喜雄教授)

【第26回教育委員会対象セミナー・大阪:2015年10月30日】

【2015年12月7日】

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