教育委員会対象セミナー・大阪 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育家庭新聞社では10月10日、第19回教育委員会対象セミナーを大阪で開催、定員を上回る85名の参加申込があった。関西圏はタブレット端末の整備・活用が進んでいるが、ICT整備・活用に関する3本の講演について、教育委員会参加者からはいずれも「非常に参考になった」というアンケート回答が多く、教員の参加者からも同様の関心が寄せられた。校務支援システムや無線LAN、電子黒板についての関心も高い。今年度は、今後東京、福岡、名古屋、岡山で本セミナーを実施していく。

意欲ある教員・学校にまず予算ー淡路市教育委員会 西岡正雄氏

淡路市教育委員会 西岡正雄氏
淡路市教育委員会
西岡正雄氏

iTunes Uで個の学び促進

淡路市の主要施策は教育、環境、企業誘致で、その第一が教育である。人口は4万5000人、小学校17校、中学校5校、児童生徒数3258人。平成30年ごろになると人口が約3000人減少するという推計があり、市の人口増加が大きな目標となっている。教育を充実することで、淡路市に移住しても大丈夫という安心感を持ってもらうねらいがある。市長が積極的に教育・教育の情報化を後押しし、予算も得られる状況にある。

教育委員会では平成22年度から校内研修の活性化を目的に教育研究活動活性化事業を開始した。外部講師の招聘や教員の先進校視察を教育委員会が支援するもの。意欲のある教員・学校に予算を配分する制度だ。

「あさひプロジェクト」で、「あ」は学力・授業力を上げるの「あ」、「さ」は資金面で支えるの「さ」、「ひ」は他の学校に広げるの「ひ」。情報共有のためにあさひシンポジウムを開き、現在も継続している。

こうした中、市教委が考案し、それによりタブレット端末の貸与をはじめたのが「研修員制度」によるフロンティアプロジェクトだ。

「モデル校スタイルは短期間で成果を出すように取り組むため、現場はかなり疲弊してしまう。学校単位での研究指定はしないが、それでも市全体に広げたい、その方策として『研修員制度』を考え出した」と西岡氏はその理由を語る。

平成24年度に5名4校(小学校2校中学校2校)の研修員でスタート。その後、25年度20名14校、26年度70名全22校に拡大。毎年50名ずつ増やし30年度までに全教員に広げる計画だ。

1人の教員に約80万円の機材を貸与し、市内で転任しても赴任校に持って行き、その教員が活用する。

具体的には教師用iPad1台と児童生徒用10台、アップルTV、プロジェクタ、WiFi‐APが1セット。

さらに、24年度から定例研修会やプロジェクト研修会を開きICT機器の操作を学び合う。定例研修会の合間にはメーリングリストで操作方法や活用事例・方法について情報交換。また、淡路市授業改善カンファレンスを2年に1回全教員の参加を条件に、会場の参加者とインタラクティブに質疑応答する形で行っている。こうした取り組みによりICT支援員をおかなくても取り組めているのだという。

タブレット端末の効果

タブレット端末使用の効果として、まずは児童生徒の興味関心が高まること。そして、絵図や動画をプロジェクタに投影することで、授業中子供たちの顔があがる。これにより、教員が児童生徒の理解具合をダイレクトに把握でき、児童生徒の理解度が向上する。また、グループ学習ではタブレットを中央におくと発言意欲が高まり、意見をまとめやすい。

具体的には、前時までの指導教材や実際の映像などをポートフォリオとしてタブレットに入れておくことができる。カメラ機能で撮影することで実技のフォーム指導が容易にできる。用語確認などのインターネット検索も容易。筆順の再学習も進む。

西岡氏は、ICT機器の活用について必ずアナログとデジタルを融合した授業であることが重要と指摘。淡路市では、平成25年2月からiTunes Uの活用を開始。縦笛の指導など、ダウンロードしたコンテンツの画面を利用して個の習得度に応じた学びも展開している。

(講師=淡路市教育委員会学校教育課指導主事 西岡正雄氏)

【教育委員会対象セミナー・大阪:2014年10月10日】

【2014年11月3日】

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