アクティブ・ラーニングにつながる学習課題を工夫<福岡教育大学附属福岡中学校>

アクティブ・ラーニングを研究テーマとして2年目となる福岡教育大学附属福岡中学校(木村次宏校長)。本年は「21世紀の学びを実現する授業づくり〜アクティブ・ラーニングを促す学習・教授パラダイム」が研究主題だ。9月10日の研究発表会では、従来型授業「Instruction」と新しい学び方「Learning」2つの学びで「アクティブ・ラーニング」を促す授業づくりを提案した。タブレット端末などのICT機器はアクティブ・ラーニングを成立させる際にどのような役割を担うのか。

能動的な学びを生み出す

理科教材
社会教材
家庭科教材
学習課題を工夫して能動的な学びを支援。上から理科、社会、家庭科の学習課題

ルーブリックは生徒に公開

同校では「一方通行的な講義型授業ではないものがアクティブ・ラーニング」であるという考えの下、「アクティブ・ラーニング」を促す授業づくりに取り組んでいる。
 研究主任の吉本悟教諭は「これまでは『次の時間、何をするんですか?』と目を輝かせる生徒の姿に成果を感じていた。これからは『次の時間、こんなことをしたい』と目を輝かせる生徒にするための授業づくりを行い『学べる人』を輩出していく。今後はどれだけ楽しく学びを深めることができるのか、がポイントになる」と述べる。

裁判長として判決を下す

「『補償』すると、『和解』なの?」「それはどうやって調べたの?」「見つけた!他の事例もある」と、能動的な活動が展開されている。「憲法」本文を真剣に読んでいる生徒もいる。

3年社会「人権の保障と公共の福祉」の学習課題は、東九州自動車道の高速道用地であるミカン園が明け渡し期限を迎え、園主がそれを拒否したことから、「園主が裁判を起こした、地方裁判長として、ミカン園立ち退き問題をどう裁くか」というもの。今まさに起こっている問題を取り上げた。

生徒は、「公共の福祉」や「自由権」「財産権」について、資料集にある憲法を読み、タブレット端末を使って、東九州自動車道の交通量や「財産権の保障」「制限」について調べている。ある生徒は「類似の判例」を見つけるため、「高速道路 立ち退き 補償」というワードで検索。「あきる野IC」の判例を見つけていた。他の生徒は、タブレット端末で「中央自動車道」の地図を調べて他の農園を探すことで他の事例を調べようとしている。

「憲法」を「自分事」として真剣に読み込んでいる様子から、憲法や法律についての興味関心が高まっていることがわかる。

福岡教育大学附属福岡中学校
課題解決に向けてインターネットや教科書、資料集を調べる
福岡教育大学附属福岡中学校2
たどりついた結論の根拠を説明
話しても聞き手も熱心だ

自分が調べたことをグループで話し合いながら、「裁判長の決定」をホワイトボードに記入していく。各自の意見発表や説明には熱がこもっている。各班のこの日の「判決」は全体で共有、さらにブラッシュアップしていく。教員は話し合いの進捗を確認しながら「権利についてもう少し調べてみよう」「裁判長としての判断を下すように」「高速道路の完成は来春であることも考えて」などとアドバイス。次の時間はいよいよ各班の「判決」が発表される。

製法の違いから食品添加物を学ぶ

1年家庭科「よりよい食品選択」の課題は「昼食に作るハンバーガー」で使う「ハンバーグ」について、「冷凍食品、惣菜、チルド食品」のどれを使うか、その理由を友達に紹介する、というもの。2時間で紹介用の原稿をまとめる。資料作成は個人で行うが、意見交流は可だ。

タブレット端末を使って各製法についての食品添加物をまとめる生徒、「カラメル色素の安全性」を調べている生徒、ナトリウムを塩分に置きかえるために計算機をたたく生徒、脂肪のエネルギー効率を調べている生徒など様々だが、「より良い判断」にたどりつこうと真剣に調べていた。

各教科で学習課題に工夫

3年理科「物体の落下運動」の課題は「落下運動の法則」について、「師であるガリレオの考えを市民にわかってもらえるような実験と説明書の作成」だ。

タブレット端末は2、3人に1台配布。生徒の検索ワードは「ガリレオ/落下運動/解明」や「教師用/自由落下運動」、「自由落下/実験」など。実際に実験を始める生徒もいる。

3年国語「おくのほそ道」の課題は、「古典が苦手な人にもわかりやすい『古典の読み解き方』教材を『おくのほそ道』を例として作る」というもの。

グループ内で「調べること」を決めるためにまず「おくのほそ道」の意見交換から始めよう、と各自が教科書を読み始めた。

3年数学はPC室で行われていた。学習課題は「『立方体に見える図形』の不思議を解明して、校章マークが立ち上がってみえるように描くための設計図を作成する」というもの。

相似の図形の性質を用いて説明でき、かつ必要な数値を求めることができるようになることが目的だ。

ルーブリックは生徒に公開する

全ての授業で「能動的な学び」を促すための「学習課題」が工夫されていた。

タブレット端末は主に「Learning」の授業で調べる際に活用している。

これら「Learning」のルーブリックは「課題に対するベストパフォーマンス」を示したもの。生徒に見せることで、学習の道しるべとしている。

 

【2015年10月5日】

関連記事

 

↑pagetop