教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

12月9日、東京都内で「第20回教育委員会対象セミナー」が開催され、全国から教育関係者が参集した。この日の講演内容を抄録する。次回の教育委員会セミナーは1月29日福岡で開催される。詳細=http://www.kknews.co.jp/semi/150129.html

新しい教育スタイル「i和デザイン」を提案 多摩市立愛和小学校・松田孝校長

多摩市立愛和小学校・松田孝校長
多摩市立愛和小学校
松田孝校長

松田孝校長(多摩市立愛和小学校)は、1人1台タブレット端末環境による新しい教育スタイルについて報告した。

ICTは絶対に必要なプラットホーム

■基礎基本の定着をテクノロジーが支援

公私を問わず学校のミッションは、グローバルな人材育成と多くの教育課題への適切な対応にある。しかし公立学校においてはその多くがいじめ・不登校・特別支援教育・食物アレルギー・防災教育など安全や福祉に関わる様々な「教育課題への対応」に重きを置かざるを得ない現状だ。

だからと言って公立学校がグローバルな舞台でも活躍できるたくましい人材の育成をあきらめる必要はない。むしろ在籍する子供の数が私立より圧倒的に多い公立学校においてこそ実現していきたいミッションだ。そんな時に出会ったのが、タブレット端末(iPad)を始めとする新しいテクノロジーだった。これらの積極的活用によって学力向上を中核に多くの教育課題を有機的に関連づけることができるのではないかと考えた。

そこで、企業などの協力や様々な方法でiPadやネットワーク環境、電子黒板等を配備し、多摩市におけるモデル校的な役割を意識して教育実践を推進してきた。児童数139名・7学級の愛和小学校では平成26年10月31日現在、児童と教員全員が1人1台でiPadを活用できる環境だ。AppleTVは16台、無線LAN環境としてアクセスポイント20台を主に廊下に配備。大型モニターやプロジェクター、電子黒板なども配備されており、新しい教育スタイル「i和デザイン」を目指して実践している。

新しいテクノロジーが当たり前のプラットフォームになると、新しい教育スタイルが生まれる。

例えば基礎基本の定着だ。

本校では、朝学習やすき間時間を活用し、iPadで各種アプリケーション(アプリゼミ、日本クイズやベネッセのデジタルドリル等)を活用して基礎基本の定着に取り組んでいる。これまで、教員の仕事の多くの時間は基礎基本の定着やすきま時間の活用に向けたプリント教材作成などに費やされていた。テクノロジーはそれを多くの部分で肩代わりすることができる。

調べ学習ではポプラディア、朝日新聞デジタルfor schoolなどのコンテンツのほか、YouTubeを始めとする様々なWebを活用。基本はiOSのWEBフィルタリングで利用している。

■協働学習が大きく変化

協働学習では、リアルタイムLMSなどの学習支援アプリケーションにより、発表活動や話し合い活動が大きく変化した。アプリ「ロイロノートスクール」は、プレゼンテーションを俯瞰しやすく制作・発表しやすいことから、プレゼンテーション能力の育成に大いに役に立っている。

プログラミング学習も展開。ビスケットやスクラッチジュニアなど各種プログラミングのアプリケーションなどの環境を提供するだけで児童は主体的に取り組み、論理的思考力や構成力の育成につながっている。ローカルなSNS(エドニティーやグーパ)の活用で様々な方とのコミュニケーションも広がった。

今後はプロジェクションマッピングなど芸術系教科での積極的活用に挑戦したいと考えている。

1年間の効果として、以下7点が挙げられる。

▼視覚支援による集中力の持続 ▼すきま時間などにおける各種アプリ等活用による基礎基本の定着 ▼豊富なデータベースの活用による検索力の向上 ▼学習支援アプリの機能(比べる、つなげる、まとめる、組み直すなど)活用による思考力の鍛錬。「思考操作」の手法を学びながら協働学習を行うと、その効果は倍増する ▼協働学習を推進しやすくなったことによる個と多様性の尊重 ▼日常的な表現活動が可能になることによる表現力の上達 ▼テクノロジーがもたらす学習の充実による意欲の醸成

既にICTは必要不可欠なツールで、今後絶対に必要なプラットフォーム。対峙すべきは「既成概念」とアナログへのノスタルジーだ。「マルつけをしない教師」「挙手しない話し合い活動」という新しい学びのスタイルはテクノロジーなくしては実現しない。

社会と学校の乖離(かいり)の広がりが懸念されている。大人が学校に参観に来ると「なつかしい」「昔に戻った気がする」等の感想を漏らす現状は憂うべき問題だ。学校は新しい時代や未来を教える場であり、テクノロジーはその象徴の1つ。子供は新しいテクノロジーを教えてくれる教員を、若手教員であってもリスペクトしている。

今後は、先に示した7つの成果をエビデンスをもって示すために全国標準学力検査(NRTやCRT)、Q‐U検査(学校生活意欲・学級満足度調査)などで分析していく。(講師=多摩市立愛和小学校・松田孝校長)

【第20回教育委員会対象セミナー・東京:2014年12月9日】

【2015年1月1日】

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