教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

12月9日、東京都内で「第20回教育委員会対象セミナー」が開催され、全国から教育関係者が参集した。この日の講演内容を抄録する。次回の教育委員会セミナーは1月29日福岡で開催される。詳細=http://www.kknews.co.jp/semi/150129.html

教育課題の解決にICTを活用 文部科学省生涯学習政策局情報教育課 豊嶋基暢課長

文部科学省生涯学習政策局情報教育課 豊嶋基暢課長
文部科学省
生涯学習政策局
 情報教育課 
豊嶋基暢課長

豊嶋基暢氏(文部科学省生涯学習政策局・情報教育課長)は「教育の情報化の動向」について講演した。

情報化が進む社会への対応力を育む

■教員研修の充実を

教育の情報化は「情報活用能力の育成」「教科指導における情報通信技術(以下、ICT)の活用」「校務の情報化」が3本柱だ。フューチャースクール推進事業・学びのイノベーション事業では、このうち「教科指導におけるICT活用」を主として取り組み、ICTを活用した学びとして10類型が示された。この学びのほとんどは「ICTがないとできない」ものではない。しかし、従来から協働学習や調査活動、思考を深める活動などに取り組んでいるほど、ICTが、これまで実現したかった学習活動をより円滑に進めるための助けになることがわかる。ICTを活用した授業で最も大変なことは、これまでの授業の組み立てを変えることにあり、従来からこういった授業を展開していないと、ICT導入の負担感が増す。ICTを活用して何をするのか、ではなく、現在取り組んでいる教育目標、たとえば学力向上、理数教育の充実、図書館教育の充実などの目標を達成するためにICTをどう活かすかを考えていくことが、ICT活用の成功につながる。

ICTを適切に活用した授業を展開するためには、相応の授業力が求められる。

教育の情報化実態等調査によると、教員の「授業中にICTを活用して指導する能力」は、他項目に比べて伸びが大きい。特に授業の導入時に活用する力に向上が見られる。一方、児童生徒のICT活用を指導する力、情報モラルなどを指導する力など、授業の中身での活用については、今後強化すべき箇所であると言える。

会計検査院では、平成21年度のスクール・ニューディール政策において整備されたICT環境の活用について調査した。それによるとICT活用率の低い教員は、「操作方法がわからない」「研修機会が少ない」「授業イメージがわかない」と回答している。この結果から、研修などの自己研鑽の機会を失すると、「授業の導入にふさわしい教材を提示して見せる」というシンプルな活用ですらできないこと、「授業イメージがわくような研修の実施」で活用率を押し上げる可能性があることがわかる。

次に、TALIS(OECD国際教育指導環境調査)の結果によると、日本の教員は、主体的な学びを引き出すことについての自信が低く、「生徒が課題や学級の活動にICTを用いる」指導実践を頻繁に行う教員の割合が低い。

教員研修はこの解決に向けて、ICT活用と授業設計の方法の双方を向上させる大きなきっかけとなる。
研修の実施については、自治体間で差が広がりつつある。ICT環境の整備には時間がかかる場合が多いため、整備されてから研修をすれば良いと考えるのではなく、授業変革に資する研修を中心に行いながらICT環境が整備されたときの準備を進めていくという手法をお勧めしたい。

文部科学省では、毎年「教育ICT活用の実践事例集」を作成しており、今年度の事例集はマニュアルなども作成してさらに充実した。事例集を見たことがある人ほどICT活用率が高いという調査結果もあり、研修などでの活用を期待している。

■校務支援システム

校務支援システムが全県に導入されている率はまだ低いが、急激に整備が進んでいる。

特に、政令指定都市・中核市・東京都23区では、域内全校で「統合型校務支援システム」が導入されている割合が52%となった(H25年度APPLIC調査)。また、政令市・中核市・23区の導入自治体は、ほぼプライベートクラウドを構築している。

校務支援システム導入の目的は、教員がもっと取り組みたいことを行うための時間の確保。導入の際には何を合理化するのかについて考えて設計する必要がある。

■ICT活用の今後

ICTを活用した教育意義については「ICTの特長を活かした教育の質の向上」がまず挙げられるが、今後一層重視すべき点は、「ICT化が進む社会への対応力の育成」だ。ICTを活用してわかりやすい授業を実現するだけでは、教育の情報化の目的が達成されたとはいえない。

現在、教育再生実行会議では「これからの時代に求められる能力を飛躍的に高めるための教育の革新」について検討をしており、ICTの適切な利用や情報モラル教育、プログラミング教育、情報セキュリティ人材の育成・確保や教育力の質の向上、オンラインによる学習コンテンツの提供など主体的な学びの促進などについて検討しており、3月頃には方向性が発表される予定だ。(講師=文部科学省生涯学習政策局・情報教育課・豊嶋基暢課長)

【第20回教育委員会対象セミナー・東京:2014年12月9日】

【2015年1月1日】

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