ICTで“思考”を拡げる―筑波大学附属小学校

筑波大学附属小学校「ICT活用授業について考える会」は、「教科の特性を活かしたICT活用場面の拡張」をテーマに授業作りに取り組んでいる。ICT活動教室には、プロジェクター4台と電子黒板1台、タブレット端末40台(Windows8)を整備しており、今夏には、低学年の全教室に電子黒板を整備した。iPadも活用しており、購入も検討中だ。9月7日、研究会結成1年の成果として、2年生と5年生の授業を公開した。

2年・図工科で「発想」を拡げる

筑波大学附属小学校
筑波大学附属小学校
他の児童の作品をチラ見できる(写真上)
ので発想が拡がりやすい(図工)
筑波大学附属小学校
筑波大学附属小学校
領土に関する様々な資料を提供(社会)

2年生・図工の授業では、ICT活用による「思考の拡張」に取り組んだ。笠雷太教諭が準備した「カタチ」を電子黒板に提示し、「何に見えるか」を皆で考える。その際、カタチの複製や回転、拡大などの操作もタブレット端末でできることを示し、方法を提示する。

学習の流れを確認した後は、タブレット端末で各児童が「カタチ」を様々なものに見立て、作品としてまとめていく。端末上の作品はそのまま教員用PCに転送され、教室前方のスクリーンには、児童の途中経過が数秒間単位で巡回提示され、他の児童の作品の「チラ見」ができる。この「チラ身」は各児童の、より異なる見方・イメージを探索しようという意欲の喚起に役立っていた。

「いろいろな見方がある」等多様性を知ることにとどまらず、ユニークな発想・見え方を自ら深めようとしている点、さらにそのユニークな視点を互いに評価し合う点など、他教科の学習にも良い影響を与えそうな活動だ。

5年・社会科で 尖閣諸島と領土問題

5年生・社会科では、来年度から教科書に加わる「尖閣諸島における領土問題」に取り組んだ。前時で排他的経済水域について学んでいる児童は、各自の端末を使って、Google earthで自宅から尖閣諸島まで擬似的に旅行。尖閣諸島と日本、台湾、中国との位置関係などを擬似的に体験した。Google earthは「3D・写真を表示しない」設定とし、ネットワークにかかる負荷を調整しており、活動はスムーズだ。

由井薗健教諭は、日本の領土は世界62位だが、経済水域で比較すると世界6位にまで上昇すること、尖閣諸島をめぐる過去の地図や歴史、中国や日本のこれまでの対応に係わる記事等、外務省のHPや書籍、インターネット等から準備した資料を、児童の発言を元に実物投影機で提示、説明を加える。「小さな無人島である尖閣諸島」の役割と重要性、それに係わる問題について考えを深めるためであり、抱えている問題の解決は簡単ではなく、今後も学び続ける必要があることを理解するためだ。

授業の終わりに由井薗教諭は以下4つの選択肢を用意し、児童に挙手させた。(1)日本固有の領土であると主張し続ける (2)共有する (3)じっくり考える (4)その他

この日の授業では、(1)と回答した児童が最も多く、9人であった。

各自の選択については、その根拠を示しながら考えを示すように促しながら、結論は出さず、次の学年で歴史を学んだ際に再度考えようとして授業を終えた。

授業後の協議会では、自ら学びプレゼンし合うという授業展開の可能性や、そのための仕掛け作りには教員主導の一斉提示ではなくフォルダに資料を格納して各自で調べさせる、百科事典など学校の資料も参照させるなどといった授業の改善案が出た。

ICTで児童の試行錯誤を促進

中川一史教授(放送大学)は、「試行錯誤や多様性理解、発想の拡大、視点の拡張に着目してICTを活用している」と評価。教員の働きかけで児童の思考を深めるきっかけを提供しており、試行錯誤を促進しているとコメントした。

【2014年10月6日】

関連記事

↑pagetop