第2期教育振興基本計画の実現に向けて

教育のIT化に向けた環境整備4か年計画―文科省

単年度予算は1678億円

教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図ることを目的に策定された計画が「教育振興基本計画」だ。「第2期教育振興基本計画」(対象期間=平成25年度〜平成29年度)は、平成25年6月14日付で閣議決定されている。文部科学省は、「第2期教育振興基本計画」と平成26年度予算及び政策の関連についてまとめている(※1)。また、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画パンフレット‐学校のICT環境を整備しましょう!」も公開した(※2)。教育の情報化実現に向け、平成26〜29年間の総額は6712億円が措置されており、単年度予算は1678億円。これらをもとに、「第2期教育振興基本計画で目標とされている水準」「IT化に向けた環境整備の所要額イメージ」「学校種ごとのICT活用」についてまとめる。
(※1)http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/1347493.htm
(※2)http://jouhouka.mext.go.jp/common/pdf/kyoiku_it_seibi_4years.pdf

文科省
第2期教育振興基本計画で目標とされている学びの姿のイメージ(文部科学省パンフレット「学校のICT環境を整備しましょう!」表紙より

 

■予算獲得のために
学校種ごとのICT活用
  身に付けさせたい情報活用力など目標例
小学校 【基本的な操作】
●文字入力、電子メールの送受信、電子ファイル保存・整理やインターネットの閲覧等を身につける。
【情報手段の適切な活用】
●様々な方法で文字や画像などの情報を収集し、調査、比較することを身につける。
(文章の編集、図表の作成、調べたもののまとめ・発表 等)
中学校 【情報手段の適切かつ主体的、積極的な活用】
●小学校で身につけた基礎的な操作に関する知識を深めるとともに、課題を解決するために自ら効果的な情報手段を選んで必要な情報を収集する。
●様々な情報源から収集した情報を比較し必要とする情報や信頼できる情報を選び取る。
●ICTを用いた情報の処理の工夫や、伝わりやすい表現等の情報を発信する技術を身につける。
高等学校 【情報手段の適切かつ実践的、主体的な活用】
●小中学校段階の基礎の上に、自ら、直面する課題等を設定して、課題の解決に必要な情報を判断し、適切な情報手段を選択して情報を収集する。
●収集した情報の客観性・信頼性の考察や考察の結果を踏まえて、様々な情報を結び付けて多面的な分析・整理を行い、新たな情報を発信する。
●相手や目的に応じて情報の特性をとらえた効果的な表現方法を身につける。
特別支援 【ICT活用による支援方策】
●特別な支援を必要とする児童生徒に対し、発達障害や視覚障害など障害の状態や特性等に応じてICTを活用することにより、各教科や自立活動等の指導においてその効果を高める。

「第2期教育振興基本計画」に基づく教育の情報化実現における単年度予算は、1678億円。校種別にみる地方財政措置額は、高等学校で425万円(600人程度)、特別支援学校は572万円(35学級)、小学校568万円(18学級)、中学校559万円(15学級)。

これらは地方財政措置であるため、各教育委員会は、学校のICT環境の整備方針や計画等について検討し、財政担当部局に要望する必要がある。

学校現場は教育委員会に対して積極的に情報提供・要望し、教育委員会ではその要望を吸い上げて必要な経費を積算、予算を要求していくという流れになる。

■第2期教育振興基本計画で目標とされている水準

○教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数3・6人
(1)コンピュータ教室40台
(2)各普通教室1台、特別教室1台
(3)設置場所を限定しない可動式コンピュータ40台
○電子黒板・実物投影機の整備(1学級当たり1台)
○超高速インターネット接続率及び無線LAN整備率100%
○校務用コンピュータ1人1台

■教育のIT化に向けた環境整備 4か年計画の所要額イメージ

単年度予算1678億円。具体的にはどのように積算されているのか。

普通教室においては、日常的な利用が図られるよう、常設を想定。授業支援ソフトやセキュリティソフトの整備も重要であるとしている。

また、教育用コンピュータのうち、設置場所を限定しない可動式コンピュータについては、充電保管庫やデジタル教材、授業支援ソフト、端末管理ソフト等の整備も同時に行う必要がある。

○教育用コンピュータ=不足台数146万台の新規導入及び既存分約191万台にかかわるリース料
○電子黒板=不足台数約40万台の整備・既存分約1万台の更新に係わる費用
○実物投影機=不足台数約33万台の整備・既存分約1万台の更新に係わる費用
○無線LAN整備=未整備約38万教室に係わる費用
○インターネット接続費用
○教員の校務用コンピュータ=約95万台のリース費用
○教育用コンピュータに搭載する学習用ソフトウェアの整備(新規導入・更新に伴うもの)
○ICT支援員の配置(情報技術者委嘱を含む)

■ICTを活用した教育の推進に資する実証事業

第2期教育振興基本計画における成長目標1「生きる力の確実な育成」基本施策1「確かな学力を身に付けるための教育内容・方法の充実」にあたるものの一つが「ICTを活用した教育の推進に資する実証事業」だ。文部科学省では、ICTを効果的に活用した教育の推進を図る上で不可欠な、教育効果の明確化、効果的な指導方法の開発、教員のICT活用指導力の向上方法の確立、これら3つの課題に対応して、今年度「ICTを活用した教育の推進に資する実証事業」を委託事業として計画。NTTラーニングシステムズが事業者として請け負う。

 本事業では、学校や教育委員会をフィールドとした実証研究が中心に行われる。5月中に公募をスタート。6月には公表される予定だ。

▼ICTを活用した教育効果の検証方法の開発(小学校3校、中学校3校)電子黒板及び教員・児童生徒用タブレットPCを導入済みでICT支援員が配置されている学校が対象。本事業では学力調査及びアンケート調査を実施する。ICT支援員の費用を自治体に対して負担する。上限100万円/校

本実証校における成果発表会は、平成27年2月または3月に行う予定。

▼ICTの活用が最適な指導方法の開発(小学校10校、中学校10校)

タブレットPC導入済みもしくは平成26年度上期までに整備計画があり、ICT支援員が配置されており、研修や授業内容などの映像制作に協力できる学校が対象。ICT支援員の費用を自治体に対して負担する。上限40万円/校。

本実証校におけるICT支援員連絡会は、平成26年11月に開催予定。成果発表会は、平成27年1月または2月に開催予定。

▼教員のICT活用指導力向上方法の開発(都道府県市区町村教育委員会6地域)

教育委員会としてICT整備計画が明確であり、域内小中学校教員研修において本事業で開発する研修プログラムを用いて研修ができる教委が対象。研修に伴う講師派遣・教材等の費用を負担する。

【2014年6月2日】

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