【特別支援】ICTで子ども輝く支援

1人ひとりにあった機能を探す

 特別支援教育において、ICTを児童生徒支援に活用する取り組みが広まっている。東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授などが、日本マイクロソフトと行った「DO‐IT School」と、ソフトバンク、エデュアスと共同で行った「魔法のランププロジェクト」の成果発表会が行われた。

端末が簡単に漢字翻訳器に

マイクロソフトがディスレクシア支援

  「DO‐IT School」では、「ディスレクシアプログラム」と「OAKプログラム」という2つのプログラムが実施された。「ディスレクシアプログラム」は、読み書きに困難のある子どもに、情報機器を使って文字を読み上げたり、入力補助機能をつかって文字や文章を書くことを支援するもの。

  島根県安来市立赤江小学校の井上賞子教諭は、読み書きに困難がある児童に、「読み」を支援するツールとしてDaisy教科書、和太鼓、PowerPointへの音声貼り付け、「書き」への支援としてAmiVoice、キーボードのかな入力、キーボードの手書き入力を使った事例を発表した。

  この児童は読み書きの困難が大きく、短い簡単な文章でも1人で読み切ることがなかなかできず、また1人では短い文章も書くことが難しい。この児童が支援を受けて国語の読み取り・テストや、日記に取り組んだ。

Surfaceを活用

  端末はSurfaceを使用した。井上教諭は、SurfaceだとOfficeを使うことができるのが大きいと話す。

  PowerPointは既存の機能だけで、「拡大して表示」「音声読み上げ」「入力フィールドあり」のテスト用紙を作成することが可能だ。

  テストをカメラで撮影した画像をPowerPointに貼り付け、画像上の問題文部分に問題文を読み上げた音声ファイルをそれぞれ貼り付ける。解答を書き込む部分にテキストボックスを設定する。作成画面のままで使うことで、児童が操作しやすい大きさで表示でき、読み上げ、書き込む機能がすべて使える電子テキストが作成できる。

  児童に配られるテスト用紙やプリントと同じビジュアルの中に音声がついているため、必要な部分をすぐに見つけて読み上げさせることができる。理科のテストでは、9割の正解率という成績もあげた。

「書けない音声入力」ではない

  児童は文書を見て確認しながらなら書くことはできる。しかし、国語のテストの場合、解答となる文章を事前に覚えて音声入力することも、文章を読み上げて入力することもできないため、実際に鉛筆で解答を記入することを選んだ。一方、日記などのように、自分が考えたことを入力する場面で、書きたいことがイメージできていれば、音声入力はスムーズに使えて助けになった。
井上教諭は「書けない=音声で入力すれば助けになる」と安易に考えていたが、それぞれの「書く」場面に求められている要素と子どもの困難な部分とをきちんと捉えての検討が必要だと痛感したという。

先端研で成果報告会

メガネのように誰でも使える支援

  ソフトバンクモバイル、エデュアスと東京大学先端研が実施した、携帯情報端末を活用した障がい児の学習支援を行う事例研究プロジェクト「魔法のランププロジェクト」の事例報告も行われた。

  香川県立善通寺養護学校の近藤創教諭は、ひらがなの文章は読めるが、漢字が読めない高校生の支援の事例を報告した。

  生徒は友人とのメールやネットサーフィンが楽しみだが、漢字が読めないため、友人はできるだけひらがなでメールを書いてくれている。また分からない漢字は母親に聞いているという。そこで、友人や母親の助けがなくてもメールやサイトを読むために、Webページの漢字にふりがなを振って表示するアプリ「ふりがなブラウザ」を導入した。このアプリを利用することで、メールやWebなどの「デジタルコンテンツ」は1人で利用することができるようになった。

  次に印刷物などのアナログデータについては、漢字をカメラで読み取ってふりがなを表示する仕組みを考えた。
「WORLDICTIONARY」というアプリとグーグル検索を組み合わせて、カメラで写した漢字の読みを表示する漢字翻訳マシーンとして利用した。漢字に対する諦めをなくすことで、新しい本を読んだり、新聞に挑戦したりすることへの興味が広がった。

頑張るだけでなく苦手をサポート

  近藤教諭は、生徒はタブレット端末やスマートフォンを利用することで苦手なことをクリアーし、『本来の力を発揮し、したいことを実行できる』ようになった」と成果を述べた。

【2014年3月3日】

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