1人1台端末活用3年間の成果―佐賀市立若楠小学校

"思考の過程"意識して活用

  佐賀市立若楠小学校は、平成22年度のICT絆プロジェクト(総務省)に採択され、以降学習者用タブレット端末などを活用した学習活動に取り組んでいる。平成25年度は「伝え合い、深め合う学びの創造‐協働的な学びを取り入れた授業づくりを通して」を研究主題に掲げ、実践を積み重ねている。1月24日に開催された公開授業研究会では4学級の授業を公開、ポスターセッション型分科会、全体会のパネルディスカッションが実施された。

絆プロジェクトで整備

佐賀市立若楠小学校

ツールを選び立体の特徴を調べる

佐賀市立若楠小学校

全教員が発表した

 同校では4〜6学年の全児童で学習者用端末(※)を1人1台活用している。

  4年2組(嶋田恭子教諭)の理科「すがたをかえる水」では、タブレット端末で撮影した実験の様子を振り返り、考察したことについてグループ内で伝え合い、深め、練り上げていく様子が見られた。5年1組(庭木繁久教諭)の算数「立体をくわしく調べよう‐角と円柱‐」では、底面カードや側面カードに加え、タブレット端末上のシミュレーション教材を活用。子ども自身が必要に応じてツールを選択し、立体の特徴を調べていく。その後、グループで話し合い、協働的学びを展開する中で共有する。いずれの授業も、タブレット端末などのICT機器が、思考の補助ツールとして日常化されている様子が見られた。

全教員が実践報告

  ポスターセッション形式の分科会(低、中、高学年、特別支援)では、全ての教員が、ICTを活用する上で留意した点や工夫したこと、失敗例などを参加者に伝えた。研究主任の内田明教諭はこの目的について「発表者と参観者が協働し知恵を出し合うことで、お互いの今後の活動に生かす」と話す。

  西村晋一教諭は「ICTの活用が目的ではなく、学習目標を達成するために効果的に活用するツールであるべき」と報告。教員の報告から、学習内容や発達段階に応じたICT活用を分析、共有、発表し、参加者とコミュニケーションをとることで、教員自ら協働的な学びを実践している様子が見られた。

  パネルディスカッションには、放送大学の中川一史教授、熊本県教育政策課の山本朋弘氏、佐賀市立本庄小学校の木田啓二氏等が登壇。木田氏は「特別支援学級でも、協力して学ぶことで達成感や有用感を味あわせたい。繰り返し何度でも振り返る、動画などをリアルタイムに見て技能を習得するといった事はICTの長所。課題を成し遂げるために必要な力を補うための環境としてICTを活用している」と話す。

  山本氏は「動画などを撮影する場面でも、思考につなげる見通しを持っていると、アングルや対象も変わる。思考を意識した活用を大切に」、中川氏は「協働的な学びに取り組むためには、事前にしっかりとした個人思考を高めておく必要がある。ICT環境が整備されることによる大変なことも多いが、実践の中で選択し、削ぎ落とし、よりスマートにシンプルな活用を」とアドバイスした。(※)「CM1」(東芝)

【2014年2月3日】

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