「未来の学びを構築する」にはどのような環境が必要なのか。そしてその環境をどのように活用していけばいいのか。総務省「フューチャースクール推進事業」や文部科学省「学びのイノベーション事業」をきっかけに、環境整備や授業スタイルの検証が広がっている。
総務省「フューチャースクール推進事業」(平成22〜24年度)、文部科学省「学びのイノベーション事業」(平成23〜25年度)実証校での検証も最終年度。導入当初と比較して、多くの実証校では、学びの姿に変化が見られるようだ。導入時の「とにかく使ってみよう」から、「必要なときに使おう」に、そして、授業目的を遂げるために「より良い形で使おう」という意識の変化が授業に見られる。文部科学省では「学びのイノベーション事業」の成果と課題を今年度中にまとめ、公表する。実証校の中から、石狩市立紅南小学校(北海道)と新見市立哲西中学校(岡山県)の公開授業の様子を報告する。
視覚的に分数を理解する |
自分の考えをワークシートにまとめる |
石狩市立紅南小学校は11月22日、公開研究会を開催した。研究テーマは「21世紀にふさわしい学びの環境と学びの姿」。
同校情報教育部では、ICT活用に関する4年間の研究を踏まえて今年度、「学力向上に役立つ1人1台環境だからできる効果的活用」「21世紀に生きる力となるICTの活用方法」「発達段階ごとの情報リテラシーの育成」これら3つの取り組みに着手。同校では、「コンピュータの操作活用スキル学年別指導内容・到達目標」「情報モラル学年別指導単元・到達目標」を取りまとめ、指導内容や到達する学年を明示、適切なステップアップに取り組んでいる。この日は特別支援学級を含めて全学年で19授業を公開。ノートやワークシートの活用を柱に、その上で授業展開に応じたICT活用を展開していた。
3年1組の算数の授業では、分数の単元で手書き描画コンテンツ作成ソフト(※1)を活用。「前時に作成したコンテンツを電子黒板に表示して振り返る」「学習内容をタブレット端末に書き込み、コンテンツとして記録した後に自分で振り返る」「作成したコンテンツを使って他の児童に自分の考えを説明する」「定着のためにドリルソフト(※2)を活用する」など複数の手法を授業展開に応じて活用していた。学習内容を繰り返し反復すること、視覚に訴えることで、学習内容の定着を図る様子が見られた。
北海道の「食の魅力」 まとめ、伝える活動
4年1組の社会「わたしたちの県のまちづくり」では、都道府県魅力度ランキング1位である北海道の「食の魅力」を発見して伝える。グループごとに、これまで学習した内容や地図帳の情報、インターネット上の資料などをスライド作成ソフト(※3)でまとめていく。参観者に向けて発表する子どもたちは、本州や九州からの参観者に、北海道の食の魅力を懸命に伝えていた。
パネルディスカッション
「ノート」「端末」
使い分けが明確に
パネルディスカッションでは、稲垣忠准教授(東北学院大学)がコーディネーターを務め、徳島文理大学の林向達氏、鳴門教育大学の藤村裕一氏、紅南小学校の加藤悦雄氏が登壇。この日の授業を総括した。
稲垣氏は「子どもたちがノートなどに書く活動が多く見られ、タブレットに書くことと区別した活用が定着している。1人1台やグループ活用もあり、学習活動が多様化している」と評価。加藤教諭は、「普通の学校にICT環境が導入されたらどうなるか、というところからスタートした。試行錯誤の末に洗練され、効果的なICT活用が普通に見られるようになった。目の前にあるものを、より良く使おうとする前向きな指導観と熱意があれば、困難は乗り越えられる」と話した。
ICT活用の今後の方向性として、藤村氏は「メディアの特性を理解した上で使いこなすことが大切。教師がプロとして1人1台のタブレット端末を使えば学力は向上する」、林氏は「今はICT環境の整備に目が行きがちだが、ICTが日常に溶け込んだ後に浮かび上がってくるものこそが重要。それはおそらく学校の文化や課題。それを踏まえ本来の学習の姿について改めて考えていく必要がある」とまとめた。(※1)ThinkBoard(ゼッタリンクス)(※2)デジタル小テスト(ベネッセコーポレーション)(※3)ジャストスマイル(ジャストシステム)
【2013年12月2日】
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