学習者用デジタル教科書は高校から

 「デジタル教科書」に関わる論争が盛んだが、その多くは「学習者用デジタル教科書」を全員に配布することを前提にした議論になっているようだ。しかし小中学校において「学習者用デジタル教科書」は準備段階にあり、現在はまだ販売されていない。かたや高等学校では小中学校と異なる動きが展開されている。指導者用デジタル教科書はこれまでほとんど存在していなかったにも関わらず、既に学習者用を想定した新課程対応のデジタル教科書や教材の提供が始まっており、選択肢が増えている。

  現在、高等学校向けに学習者用としてデジタル教科書を複数教科で提供しているのは、東京書籍と数研出版だ。

  東京書籍では国語・社会、数学・理科・英語・情報・家庭の7教科14冊を提供。今後3冊を用意する予定。通信機能を活用し「先生が課題を生徒に送信」「評価やコメントを返信」など、インタラクティブなやりとりが可能だ。単元ごとに生徒の理解度をチェックし、教員のiPadで一元管理もできる。現在提供されているのはiPad版だが、Windows8及びRT版は来春に提供。国語と英語については教師用・生徒用モードがあり、登録内容によって使用できる範囲が変わる。

  中学校・高等学校向けにデジタル指導書や各種データベースを提供している数研出版では、学習者用としての使用を視野に入れた高等学校向けのデジタル版教科書foriPadを国語(古典編)、数学、理科、社会、情報において計32点を提供している。

  啓林館では、平成25年度版より英語において教師用・生徒用(オンライン)合わせて8点を提供。HTML5を採用し、マルチデバイスに対応した。生徒はWebにアクセスして利用する。

  桐原書店は英語において指導用/生徒用のデジタル教科書を提供。指導用のデジタル教科書はWindows版のみで「教授用指導書+デジタル教科書」という構成。生徒用はiPad版で、オフラインで使用できる。来年度よりグラマーテキストにもリンクし、反復学習に役立つようにする。

佐賀県「5万円負担」は 端末+ソフト・教材込み

  県立高校全校において新入生を対象に学習者用端末を利活用した教育を実施する佐賀県では、その負担費用を一律5万円としている。その費用が「高い」という声もあり、県では相談室を複数個所設置。設置後2日間で相談件数は数件程度とそれほど多くはないようだ。

  「5万円負担」は本当に高いのか。

  県教育事務所によると端末代金に含まれるものは、「Windows8Pro端末・オフィス系ソフト・電子辞書(国語・英語)・漢字ソフト・3年間補償費・各教科デジタル教科書・教材」だ。

  デジタル教科書・教材については、各校がそれぞれの教育目標に従って県に申請・許可を得て導入される。

  県教育事務所では学校に対して「どの教科でもデジタル教科書・教材が使える体制の整備」を依頼しており5万円を超える分は県が負担することから、あらゆる教科で何らかのデジタル教科書・教材の活用が実現することが予想される。

  一般的に、高校入学時には教科書・副教材費用で年間4〜5万円、電子辞書等の購入で2〜3万円はかかる。それとは異なり、佐賀県では端末に多種類の教材が同梱される。岐阜県立岐阜各務野高等学校でもタブレット端末購入が義務付けられているが、それに伴って電子辞書及び英和辞典の購入は不要としており、その分の保護者負担は減る形だ。「一律5万円が高い」というのは早計であると言えそうだ。

【2013年10月7日】

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