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「校務の情報化」14年間 毎年見直しで進化中 ― 春日井市教育委員会 指導主事 前川 健治氏

春日井市教育委員会 指導主事 前川 健治氏  春日井市で小中学校を結ぶセンター集中型のネットワーク「ハルネット(haru‐net)」が開設したのは、平成11年10月。以来14年かけて校務の情報化に取り組んできた。

  「ハルネット」は、教育委員会に設置されたデータセンターネットワークを中心に、市内小中学校、教育研究所、院内学級、少年自然の家を結ぶ教育ネットワークだ。「誰でも」「いつでも」「どこでも」使うことができ、「自主的・主体的に学習できる」ことがコンセプト。

  「ハルネット」構築前は、学校によってネットワーク環境はバラバラで、学校間の情報共有などは全く考えられなかった。また、学校の情報を個人が管理するなど情報セキュリティの意識も育たなかった。それが「ハルネット」が構築されてからは、学校間の連携が深まり、情報が共有されるようになった。特に養護教諭や教務主任など同じ職種の間で横のつながりが生まれ、他校との情報交流も活発になった。

  「ハルネット」は、春日井市の学校の様子が分かる外部に向けた公開ページとは別に、市内イントラネットのみで閲覧できる教職員専用ページが設けられている。そこでは全職員のメールアドレスが検索できるほか、市教委からの連絡事項や行事予定などを確認できる。

  また、その学校の教職員だけが見られる「職員室内ページ」では、その日の連絡事項が掲示されるので、朝の打ち合わせ廃止や時間短縮につながった。「校務主任のQ&A」のページでは、転入生の移動理由の書き方など何か困った時の対処法などが載っている。

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  「ハルネット」が構築されてからの14年間を振り返り、情報化を成功させる秘訣として、(1)「システム化して、何をやりたいのかを明確にする」、(2)「システムを使わざるをえない仕組みづくり」、(3)「システムの活用を支える組織づくり」の3点を挙げる。

  システム化に向けては、まず現在の業務を見直して、その業務がシステム化できるかどうかを考える。システム化が難しいようならば、どういった点を変えればシステム化が可能かを明らかにすることがポイントだとする。

  また、自分たちの地域に合ったシステムを作ることも大事だ。成績処理の方法などは地域によって異なり、既存のシステムに当てはまらない場合がある。せっかくシステムを導入しても、その地域のやり方に合わず、使ってもらえないのでは意味が無いからだ。

  システムを活用してもらうもう1つのポイントは「みんな同じ」という考えだ。情報の共有化を図るため、データ保存用フォルダを共通化し、成績処理ソフトも市内の学校で統一した。これにより学校を移動しても同じシステムを使うことができ、身に付けたスキルが無駄にならないという安心感につながった。

  「春日井市の場合、ネットワーク構築による成果を急いだわけではなく、5年スパンの考えで、やれることから無理をせず、実践を重ねてきた。自分たちが望んだことが実現できるシステムづくりを行っていこうと、毎年目標を決めながらシステムを活用し、1年経ったら見直すというサイクルが取られた。ここで大事なのが、教職員主導ということ。行政主導でシステムを導入しても、自分たちが望まないものでは現場で使ってもらえない」。

  システムづくりにゴールはなく、現在も進化中と語る。教育現場で活用されるシステムとはどういったものかを常に考えている。

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【2013年3月4日】

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