【特集】特別支援とICT

特別支援向けデジタル教科書・教材  ICT活用に関する調査・研究―国立特別支援教育総合研究所

 国立特別支援教育総合研究所では平成23年度、デジタル教科書・教材及びICTの活用に関する基礎調査・研究を行っており、このほど報告書が同研究所Webにアップされた。研究代表者は同総合研究所の金森克浩氏。本研究では、文部科学省・教育の情報化ビジョンやデジタル教科書教材協議会(DiTT)提言書の参照、指導者用デジタル教科書の発行会社へのヒアリングなども行った。

 本研究は、障がいのある子どもが教育にアクセスするための重要なツールとなるICTの活用に向けて、その中核となる「デジタル教科書・教材の活用についてのガイドライン(試案)」(以下、ガイドライン試案)を作成するとともに、ICTを活用した教育改善について必要な基礎的情報収集を行ったもの。

  「指導者用デジタル教科書」「学習者用デジタル教科書」、障がいのある子どもたちのための「教科書のデジタルデータ」(拡大教科書用PDFデータ、DAISYほか)の3つをデジタル教科書と捉え、「ガイドライン(試案)」を作成。「すべての写真、図表、画像、動画にテキストが付加されていること」「再生動画は字幕などの代替えコンテンツで理解可能にすること」など、具体的な対応内容を示した。

  本研究報告の考察においては「それぞれの特性に応じた内容に加工できる仕組みの提供の必要性」について言及、「本ガイドラインに示す内容がデジタル教科書発行者にとってコスト面で過剰な負担が見込まれ、実現が難しい場合は、具体的な見直しが必要」、「あらゆるニーズの子どもに対するアクセシビリティを確保するには、著作権やデータ形式など様々な課題がある」点なども指摘されている。

◇海外におけるデジタル教科書

  アメリカでは、IDEA(個別障害者教育法)の改正により、印刷教科書での読み書き・学習に困難のある子どもへの対応が強く求められている。そこでIDEAでは、小学校から高等学校まで、教科書発行会社は教科書デジタルデータを全国教材アクセシビリティ標準規格のファイル形式で全国教材アクセスセンターに納めるように規定している。このデータファイルが点字や音声、拡大、DAISYファイルに変換され、利用されている。

  韓国ではKERIS(韓国教育学術情報院)が主導となる、2007年より全国132校で実証実験を実施、2014〜2015年に提供することを目指している。現在韓国のデジタル教科書のデータ形式はXML方式だが、今後はEPUB方式とし、タブレットPCやiPadなど様々なプラットフォームに対応できることを目指す。 

◇平成24・25年度は特別支援向け「デジタル教科書・教材」を試作

  平成24〜25年度は、ガイドライン(試案)を基に、デジタル教科書・教材の試作とガイドラインの検証を行う。

  学校での機能評価では、実際に児童生徒及び教員にデジタル教科書を試用してもらい、ガイドラインの有効性を評価、ガイドライン(試案)の改善を進め、特別な支援に広く対応可能なデジタル教科書の具体例を示すとともに、その有効性が検証されたデジタル教科書のガイドラインを提案する考えだ。▼詳細=http://www.nise.go.jp/cms/8,2975.html


 

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【2012年9月3日】

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