京セラ丸善システム インテグレーション 鈴木幹夫代表取締役 |
いまや全世界的な潮流となっている児童生徒1人につき1台のPC整備。それを実現するためには予算の確保が必要だ。それを最大限無理なく実現するキーポイントが、既に全小中高に整備済のコンピュータ室(以下、PC室)ではないだろうか。更新時には前回予算が踏襲される。それを活用し、必要十分なシステムを前回導入時より格段の低コストで整備することで、授業内容を充実させるためのデジタル教科書・教材や支援システム、電子黒板、さらには個人用PC整備に着手することができる、と京セラ丸善システムインテグレーション株式会社の鈴木幹夫代表取締役社長は話す。低コストで既存のPC室を整備・支援できる新ソリューションについて聞いた。
PC室の整備・管理 コストを最低限に
PC室での授業支援にとどまらず 普通教室でも活用できる |
「児童生徒1人につき1台のPC整備は最早、世界的な潮流と言えます。PCやネットワークの活用はビジネスシーンでは必須ですから、学校教育において教育的な見地を持って常に活用できる環境を提供していく必要があります。ところが現在の日本は児童生徒6・6人につき1台の整備状況です。これを限られた予算の中で1人1台に引き上げていくためには、これまでと同様の整備方法では無理がある。そこを解決するのが『HP MultiSeat Computing』です」
これは、1台のホストPCを複数で利用することができるシステム。一昨年より文教市場に提供を開始したところ、大学や図書館から導入がスタート、1年を経て各地教育委員会にも徐々に導入が始まっている。「1台のホストPCを複数人でシェアすることで、低コストで1人1台のPC環境を提供することができます。さらに、運用管理も簡単になり、消費電力の低減にもつながります」
同社によると、「HP MultiSeat Computing」の導入により、1台のホストPCで最大15ユーザーまでPCを稼働でき、管理コストは約1/5以下に、ハードの導入コストは約1/2、消費電力8割減が実現すると言う。
「学校にそれほど提案していない時期にも引き合いが多かったことを考えると、ニーズはまだまだあり、今後は現場ニーズに対応しながらより使いやすいシステムとして提供していきたい」と話す。
PC室と普通教室の使い勝手を統一する
ハードだけではなくソフトも同時に提供できるのが今回の新ソリューションの特徴だ。
「PC室には授業支援システムが必須であり、既に日本でも広く活用されています。しかし現場ニーズに対応を重ねた結果、機能が複雑化し、結果コストが高くなってきているという問題点がありました。そこで、ヨーロッパの学校を中心に広く活用されている『HP Classroom Manager』を活用することで、コストを低く抑えることができます」
「HP Classroom Manager」は、1画面でクラス全体の作業画面を一覧できるサムネイル表示機能、教員や特定の生徒の画面を全員、もしくは特定の生徒に転送できる画面転送機能、管理者PCから個別PCの電源オン/オフ、ネットワークのログオン/ログオフ管理などの機能を持つ授業支援用ソフトウェアだ。グローバル展開しているシステムは、必要かつ十分な機能を持ちながら、結果コストを低く抑えることができるという大きなメリットがある。
さらに注目すべきは、その機能がPC室管理にとどまらない点だ。
「『HP Classroom Manager』は、普通教室における、既に導入済の電子黒板や1人1台の学習者用端末にも活用できます。PC室と普通教室での使い勝手が統一化できることは、今後の拡張性を考えても望ましいことだと思いませんか?」
現在実証実験が進んでいる普通教室での個人学習者用端末では、その活用のために個別システムが開発されている。現状ではPC室と普通教室の使い勝手が異なる可能性が高く、コストが高くつく可能性がある。これが統一化することは、システムの活用方法を習熟する時間を可能な限り短縮したいと考える教育現場にとって望ましい。
「学校で注力すべきは授業の中身。システムやPCなどハード面は、十分な機能を持ちながら管理もシンプルなものを最低限のコストで提供する、というのが教育分野における我々の役割」と話す。
PC室でも普通教室でも同じ使い勝手で活用できるということは、普通教室での1人1台PCの導入をよりスムーズにサポートする可能性もあると言える。
◆PC室整備を低コスト化 PC管理負担を低減する
HP MultiSeat Computingは、1台のPCを複数人でシェアすることで、低コストかつ運用管理の負荷軽減、低消費電力を実現する。1台のPCで最大15人が利用できる。同社によると、HP MultiSeat Computingの導入により、管理コストは約1/5以下に、ハードの導入コストは約1/2、消費電力8割減が実現する。
ホストPCとの接続はUSB及びイーサネットが選択できる。
◆PC教室と普通教室の授業支援・管理を統一化
ヨーロッパで広く活用されている授業支援システムをHP ClasroomManagerとして提供。より安価にPC教室や学習者用PCをコントロールできる授業支援を実現する。
1画面でクラス全体の作業画面を一覧できるサムネイル表示機能、教員や特定の生徒の画面を全員、もしくは特定の生徒に転送できる画面転送機能、グループ間やマンツーマンでのコミュニケーションが可能なチャット/メッセージ機能などを搭載。生徒から先生への個別の質問、先生から特定の生徒に向けた授業内容のフォローアップもできる。
また、教員(管理者用)PCから児童生徒(学習者用)PCの電源オン/オフ、ネットワークのログオン/ログオフ管理、生徒のキーボード、マウスのロックや生徒の画面ロック、児童生徒が閲覧できるWebサイトの制限、教室内のプリンター、USBメモリーなどへのアクセス制限といった管理機能も持つ。
専用サーバは不要で、インストール後すぐに活用できる。試用版はWebからダウンロードできる。
ww.hp.com/jp/cm_dl
これらのシステムと組み合わせ、マルチタッチとペンによる書き込みが可能な日本HP社製スレートPCを学習者用PCとして活用したり、電子黒板システムを活用することで、トータルなICTソリューションを提供できる。
▼問合せ=京セラ丸善システムインテグレーション株式会社 経営企画本部 マーケティンググループTEL=03・6414・2873 /FAX=03・6414・2891 /Mail:school@kmsi.co.jp
教育スクウェア×(バイ)ICTの実践が進んでいる。これはNTTグループが全国5自治体の公立小・中学校計10校及び学識経験者、教育関連企業等の協力を得、2011年4月から行っているフィールドトライアルだ。民間主導のICT活用実証実験とも言えるもので、3年計画で10億円をかけて行う。平成23年度は学校・自治体と共に環境を構築。平成24年度は、一過性で終わらないよう持続できるシステムについて検証し、平成25年度は普及と定着を実現する計画で、現在公立小・中学校計10校のフィールドトライアル参加校ではICTを活用した授業が始まりつつある。
教育クラウド 環境を検証
参加校は、秋田県八峰町(八森小学校・塙川小学校、水沢小学校)、岡山県倉敷市(粒江小学校、玉島北中学校)、新潟県関川村(関川小学校)、神奈川県川崎市(南百合丘小学校)、鹿児島県与論町(茶花小学校、那間小学校、与論小学校)の全5自治体9小学校1中学校だ。このうち秋田県八峰町、新潟県関川村、鹿児島県与論町は公設民営の光回線IRU(Indefeasible Right of User)が敷設されており、その有効利用の目的も本トライアル参加の理由の1つだ。
対象学年は小学校5年生と中学校2年生。対象教科は、小学校は算数、理科、社会、中学校は英語。各自治体につき1人ICT支援員が常駐している。
小学校にはアンドロイドOSのタブレット端末、中学校にはノートPCを対象学年の児童生徒に1人1台配布。配布された端末は、スマートフォンタイプの「ギャラクシーTab」(ドコモ)、ペン入力もできる「LifeTouch」(NEC)、10インチ画面の「FOLIO100」(東芝)の3種(写真)で、様々な大きさ、インターフェイスの違いについても検証する。中学校でノートPCとしたのは、キーボードやスピーカー等の使用が英語教材における自学自習環境として有効であるという考えからだ。
白R大学の赤堀侃司教授を座長として有識者、パートナー企業で構成されるラウンドテーブル(意見交換会)や教科アドバイザらによるアドバイスに基づいて推進している。
フィールドワークの基本環境は強力なネットワークと教育クラウド。これにより、職員室、教室、家庭どこからでも教材コンテンツを利用したり、ストレスなくいつでも学習者用端末を使ってネットワークを利用したり、国内外とテレビ会議やWeb会議をすることができる。この環境を活かせる各教科教材も作成、検証が進んでいる。
単元に合わせて 教材が自動抽出
トライアルでは簡単に教材を利用、授業準備ができることが普及のポイントであると考え、「授業シナリオ作成ツール」を提供している。これは教員がオンラインで授業シナリオ(指導案)を作成できるというもので、興味深いのは、教科、学年、学習単元を選択すると、そこで活用できる動画教材などが自動的に選別され、授業案ウィンドウに現れる点だ。教師は提供された動画教材から授業で実際に使いたいものを選択、指導案上に埋め込むことができる。さらに、この教材を家庭で見て復習できるように設定もできる。家庭でも、授業で使った動画を見ながら復習できるという仕組みだ。
この授業シナリオは、ボタン1つで共有でき、公開範囲も、校内、全国などを選択できる。また、他の教員が作成、アップした授業シナリオを使うことも、それを改変することもできる。
小学校社会「日本の水産業」では、棒グラフ「日本の漁業別生産量の変化」の一部を隠して提示でき、今後の変化を予想したり、ひとつひとつ提示して説明しやすくなっているなどの工夫がある。小学校理科「流れる水のはたらき」のモデル授業では、砂場での流水実験観察をタブレットPCを使って授業を記録、実験結果を撮影した動画を使って発表、教員の解説と動画教材による確認という流れだ。
学習者PC用 教材を開発中
一斉指導を目的にした教師用教材と、児童生徒1人1台端末に向いた教材には、求められるものが違う。そこで児童生徒1人1台端末に向いた教材も単元ごとに開発中だ。
算数の図形領域では、図形を切ったり移動して考えることができる。さらに、どのように動かしていったのかについて経過が記録できるようになっており、それぞれの児童の考え方が再生できる。
中学校英語では、授業時間50分の最後の10分間でICT学習ツールを使って学習する。「語彙記憶ツール」と「発音練習ツール」の2つが提供されており、生徒はどちらかを選択して学習する。「発音練習ツール」では実際の発音と自分の発音を聞き比べることができ、家庭でも発音を繰り返し学習できる点が好評だ。教科書本文を提示して読み上げたり、発音練習もでき、効果的な復習ができると参加校の生徒や保護者に公表だ。
交流学習や遠隔授業も
ストレスなく交流学習や遠隔授業も実現できる点もトライアルの特徴だ。
小学校社会単元「日本の工業」では、学校2校と企業(トヨタ自動車)を結び、遠隔授業を行った。また、英語を使って意思を伝える機会の提供目的に、中学校では海外との交流授業も行った。交流先は、オーストラリア・ビクトリア州のFairhills High School。交流には、電子黒板とテレビ会議システム「Meeting Plaza」を使い、生徒たちが手づくりしたパネルを使って日本文化を英語で紹介するなどした。
震災後の学習の支援環境を提供
実証実験以外の動きもある。昨年は東日本で大震災が起きたことから、避難所で生活する児童・生徒の学習の遅れを取り戻すための自習環境が必要であるという声を受け、ICT教材も提供した。提供総数は、電子交黒板2セット、PC10セット、タブレット端末297セット。岩手県釜石市山田長、大槌長にはタブレット端末とドリル教材、電子黒板を、宮城県女川町にはタブレット端末とドリル教材、スクールバス位置確認システムを、福島県双葉町の避難先である埼玉県加須市にはPCとドリル教材を提供。女川町では教育委員会や塾、地元のNPO法人「カタリバ」が連携して、児童生徒の学習の場「女川向学館」も提供された。
横浜市教育委員会は市内小学校344校・約1万人の教職員で活用する校務システムをクラウド基盤で構築する。最大で約19万人の児童情報が格納される日本最大規模の校務支援システムとなる。
横浜市ではこれにより、児童及び保護者名簿、出欠席管理、健康診断記録、成績処理、指導要録等の情報を相互連携し、帳票完成までの一体化したシステムを構築することで教職員の教育活動の時間を確保、さらなる教育の質の向上を図る。
横浜市にクラウド基盤を提供するのはNTTコミュニケーションズ。同社によると、クラウドサービスを活用することでシステム基盤を個別に構築する従来の構成と比較するとサービス提供までの期間を約40%短縮できる。
インターネット回線を用いず、既存の教育情報ネットワークと専用回線で接続することでセキュアな環境を提供する。既存の認証基盤との連携で、学校現場はこれまでと変わることなく利活用できる。さらにハードウェアの監視やソフトウェアの更新、メンテナンス、運用を提供、TCO削減を実現する。
同社では、総務省「フューチャースクール推進事業」及び文部科学省「学びのイノベーション事業」での取り組みで培った知見を活かし、メール、ストレージ、ウェブフィルタリング、デジタル教科書の配信などの機能を充実させ、将来的には海外での導入も視野に入れた展開を目指す考えだ。
総務省は、平成23年度3次補正予算において、東日本大震災により被災した地方公共団体が抱える課題を効率的・効果的に解決する情報通信技術利活用事業の初期導入に係る経費(ランニングコスト等を除く)を補助することにより、被災地域の復興を促進する。
なお補助事業者である特定地方公共団体等自らが事業を実施する「直接補助」と、補助事業者である特定地方公共団体等が、法人又は協議会等である間接補助事業者に対して補助を行い事業を実施する「間接補助」がある。
補助事業は単年度事業であり、原則年度内に事業が完了する必要がある。工事は交付申請書に記載した完了予定日までに、補助事業は当該事業年度内に終えることが必要。
申請申込締切は2月9日。
このうち「ICT地域のきずな再生・強化事業」では、36.9億円をかけて東日本大震災からの復興を促進する。補助対象地域は、11道県222市町村及び福島県指定市町村。11道県222市町村に33億円、福島県指定市町村に3.9億円。補助対象経費の総額の3分の1を交付する。交付下限額が100万円。上限は原則なし。東日本大震災の影響により避難を余儀なくされた避難住民等と避難元市町村とのきずなの維持及び避難住民等の一体感の醸成に要する経費の一部に対する補助事業で、本事業の補助対象は、避難住民等と避難元市町村とのきずなの維持及び避難住民等の一体感の醸成を図るものとする。
■(被災地域情報化推進事業)
(1) 東北地域医療情報連携基盤構築事業
(2) ICT地域のきずな再生・強化事業
(3) 被災地就労履歴管理システム構築事業費補助事業
(4) 被災地域ブロードバンド基盤整備事業
(5) スマートグリッド通信インタフェース導入事業
(6) 災害に強い情報連携システム構築事業
(7) 自治体クラウド導入事業
■対象となる特定地方公共団体
【北海道】広尾町・浜中町【青森県】八戸市・三沢市・おいらせ町・階上町【岩手県】県内全市町村【宮城県】県内全市町村【福島県】県内全市町村【茨城県】水戸市・日立市・土浦市・古河市・石岡市・結城市・龍ヶ崎市・下妻市・常総市・常陸太田市・高萩市・北茨城市・笠間市・取手市・牛久市・つくば市・ひたちなか市・鹿嶋市・潮来市・常陸大宮市・那珂市・筑西市・坂東市・稲敷市・かすみがうら市・桜川市・神栖市・行方市・鉾田市・つくばみらい市・小美玉市・茨城町・大洗町・城里町・東海村・大子町・美浦村・阿見町・河内町・利根町【栃木県】宇都宮市・足利市・佐野市・小山市・真岡市・大田原市・矢板市・那須塩原市・さくら市・那須烏山市・益子町・茂木町・市貝町・芳賀町・高根沢町・那須町・那珂川町【埼玉県】久喜市【千葉県】千葉市・銚子市・市川市・船橋市・松戸市・成田市・佐倉市・東金市・旭市・習志野市・八千代市・我孫子市・浦安市・印西市・富里市・匝瑳市・香取市・山武市・酒々井町・栄町・神崎町・多古町・東庄町・大網白里町・九十九里町・横芝光町・白子町【新潟県】十日町市・上越市・津南町【長野県】栄村
佐賀県では総務省の委託を受けて「自治体クラウド開発実証事業」を実施した。地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村がこれを共同利用することによって、情報システムの効率的な構築と運用を実現させようとするための実証実験である。
実験の結果、手続きに要する住民の待ち時間や、職員の業務処理時間の短縮が確認され、コスト削減にもつながることが明らかになった。
なお、この実証事業は佐賀県ICT推進機構の取り組みの一環として実施され、あわせて、イノベーション“さが”プロジェクトにおける日本ユニシスとの共同研究として行った。
◆思うように進まない行政の電子化 韓国は世界ランキング1位
日本は2001年にe‐Japan戦略を策定し、世界最先端の電子国家を目指して各種施策を行ってきた。しかし、思うようには進んでおらず、国連の世界電子政府ランキングでは17位(2010年)と、中進国レベルにとどまっている。
一方、隣の韓国は、国連世界電子政府ランキング1位と行政の電子化は一般に想像される以上に進んでいる。
こうしたことが背景となり、佐賀県では総務省の委託を受け、「自治体クラウド開発実証事業」を実施することになった。
事業の目的は、参加市町の業務プロセスの改善(BPR)を推進した上で、「住民サービスの向上」、「市町の業務効率化」「抜本的なコスト削減」などを実現させるための市町の共同利用システム開発実証を行い、質の高い住民サービス提供のための環境整備を推進することにある。
参加市町は、武雄市、鹿島市、嬉野市、大町町、江北町、白石町の3市3町。対象業務システムは、基幹系業務システム(住民情報、税、国保)。佐賀県が事業主体となり、平成21年度〜22年度に実施された。
◆”見える化“で継続的な改善 ベンダーロック排除も課題
本事業のポイントは、大きく以下の3点にまとめられる。
(1)業務プロセスの改善(BPR)と共同利用型情報システムの開発
「住民サービスの向上」「市町職員の業務効率化」「市町の抜本的なコスト削減」を目的に、業務プロセスの改善と共同利用型情報システムの開発・効果検証を行う。なお、BPRとは、Business Process Re‐engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、業務内容や業務の流れ、組織構造を分析し、最適化することを指す。
(2)新たな技術の検証(クラウドなど)
仮想化技術を利用したハードウェアの効率化や大規模災害を想定した遠隔地でのデータ保存など、情報システムの新たな技術の検証を行い、その信頼性等を確認する。
(3)本格移行検討支援
本格移行した場合のコスト比較や、データ連携、データ移行に関するシミュレーションなどを行う。
「効率的な行政運営と効果的な行政サービスの実現を図るためには、各種業務プロセスを“見える化”して、継続的に改善が進むようにすることが必要です」と、佐賀県統括本部副本部長 情報課長事務取扱・志波幸男氏は、業務プロセスの“見える化”の重要性を指摘する。
さらに、「業務を支える情報システムが業務改善とともに改良される必要があります。そのためにはベンダーロックを排除し、透明性、競争性の高い調達を可能する必要があります」と、ベンダーロック排除にも言及した。
◆遠隔地サーバーによる業務
3時間25分で再開を実証
実証事業の成果を見てみると、次のようにいずれも待ち時間やコストなどの削減効果が確認された。
(1)住民サービス向上
手続きに要する住民の待ち時間が約31%削減(※重点調査領域の19手続、測定対象市町の数値による)
(2)業務の効率化
職員の業務処理時間が年間6,543時間、約30%削減(※重点調査領域、測定対象の市町の数値による)
(3)抜本的コスト削減
導入一時費用をすべて含んだ場合は約27%の削減。また、導入一時費用を含まない場合は約40%の削減(※今回開発したシステム(住・税・国)のみで比較した場合の試算)
大規模災害の発生を想定し、災害発生後、佐賀県で稼動しているシステムを東京のデータセンターに移して、業務継続性を測定したところ、災害発生から3時間25分で業務を再開できることが確認された。
志波氏は「現在の市町村情報システムの課題は、過度の業者依存によるシステム開発および運用費用の高止まりと、業務効率化や行政サービスの高度化が進まないこと、年々高度化するICTへの対応の困難さにあると言えます。現状のままではコスト高が継続する恐れがあり、その解決策として、共同利用によるコスト低減と機能の高度化が必要になっています」と、共同利用システムの必要性を強調した。
【2012年1月1日号】