群馬県では、教員の負担を軽減する目的で、全県で統一した校務支援システムの導入を決めた。県下の各市町村ではその方針を受け、「群馬県版校務支援標準システム」の導入を順次進めており、平成23年度現在全506校中、220校が「群馬県版校務支援標準システム」の活用をスタートしている。そのうち通知表まで活用しているのは180校だ。県統一版導入の方針を打ち出した意図と経緯を群馬県教育委員会・義務教育課指導主事の木口卓哉氏に聞いた。
義務教育課・指導主事 |
平成17年度、群馬県内の小中学校教員を対象に「教員のゆとり確保」のための調査を実施したところ、多忙感を感じている教員は97%にも及んだ。そこで平成18年度より群馬県市町村教育長協議会「教員のゆとり確保専門部会」の中で、校務の効率化・IT化について検討を開始。平成19年度、「群馬県版校務支援標準システム」を導入し、県全体に定着させていく方針を決定した。
その結果標準システムとして採択されたのが、(株)EDUCOMの校務支援システム「エデュコムマネージャーC4th(シーフォース)」(以下、「C4th」)だ。グループウェア機能に加え、子どもの出欠や通知表、調査書、指導要録の作成、保健管理など学校に特化した機能が特徴で、選定にあたっては、学校に特化したシステムとして開発されている点、研修やサポートが充実している点などが各自治体の指導主事、情報化整備担当者から評価された。平成20年からは、各市町村の担当者が参加する連絡協議会において、具体的な導入方法、予算取りのための情報交換などが行われ、準備が進んだ各市町村から順次「群馬県版校務支援標準システム」の導入を開始した。
■県統一版化でコスト削減も
県統一版としての導入には、様々なメリットがある。
第一に、経費面のメリットだ。調査書や指導要録などを県統一版としてカスタマイズすることで、市町村ごとに必要なカスタマイズの手間などを大幅に軽減でき、導入費用の軽減につながる。
統一化により、校内はもちろん、学校をまたいだデータ連携もしやすくなる。成績から指導要録まで一元管理が可能になり、過去の指導経緯も集約・蓄積、参照しやすくなる。市町村間で教職員が異動しても、同じ仕組みを使っていることで業務に慣れるために必要な時間を軽減できる。
■ 特別支援学級や中学校などでも標準化を進行中
県統一版としてシステムをカスタマイズするためには、帳票そのものの統一が必要だ。群馬県では、小学校において指導要録の様式が大幅に変わるタイミングで、県統一版を作成。来年度は中学校においても統一を進めていく。また、特別支援学校や特別支援学級の指導要録も子どもに合わせ、複数のパターンから選択して使えるようにした。さらに、児童生徒ごとに評価項目や内容が細かく異なることから、統一することが難しい特別支援の通知表についても、パターン化された通知表を利用したり、各校で簡単に通知表のレイアウト変更ができるようにするなど、柔軟性を持たせることで統一を図る計画だ。
◇ ◇
各校からはどのような声が届いているのか。
県では実態調査を毎年実施しており、平成22年度末には、校務支援システムの導入年度ごとに、負担減になったと感じられる校務内容と効果が上がったと感じられる教育内容について調査した。
それによると、教育内容について特に回答が多かったのは、「休日及び時間外勤務時間の減少」、次いで「授業準備・教材研究時間の増加」、「作品やノート評価の時間の増加」であった。
最も負担減になったと感じる校務は「出席簿の作成」だ。導入後半年以上を経過すると効果を実感する教員数が急増し、8割以上がその効果を実感している。次いで、「通知表の作成」、「指導要録の作成」が続く。これら3つは最終的には全校で使用することが推奨されており、データ連携の効果が最も現れやすいものと言える。いずれも導入時期が早いほど、負担減を実感する教員の割合が多くなる。
木口氏は、「校務の情報化の目的は、子どもと向き合う時間を増やすこと。今回の調査結果では、子どもと向き合う時間が増えたと回答した教員数は増えつつあるものの、多いとはいえない。今後はその部分の伸びを期待したい」と話す。
【2011年10月3日号】
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