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緊急時に対応できるメール配信システムを
【柏市教育委員会】【旭市教育委員会】【印西市教育委員会】

 かつて、緊急に知らせなければならない情報を連絡する最もポピュラーな手段は、電話連絡網であった。それに代わり、かつプラスαの役割を果たすものとして、メール配信システムを利用した連絡網の導入が各自治体で増えている。各自治体での導入のきっかけと運用、活用効果について聞いた。

柏市教育委員会

スクールメール導入は平成17年から
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和田俊彦氏

 千葉県柏市は平成17年度からスクールメールを導入しており、平成22年度には5年間リース契約が終了、その後もバージョンアップした「スクールメール@コネクト」(以下、スクールメール)を継続して活用している。これまで利用していた保護者の登録情報、運用を引き継ぎ、5年間の学校現場のニーズを盛り込んだシステムを新たに柏市立の幼稚園・小中学校・高等学校計63校(園)に導入した。平成23年度4月現在の登録者は約3万2000人、配信したメール数は約300万件。導入当初から「スクールメール」に関わっている柏市の和田俊彦指導主事に、導入の経緯と活用の様子を聞いた。

教委から学校へ 学校から家庭へ

  平成17年度当時、柏市では、市民の安全確保が課題となっており、教育委員会では携帯電話を使って不審者情報等の配信ができるシステムの導入を検討していた。検討の末、採用されたのが、「スクールメール」だ。

  スクールメールは、児童生徒のための安全確保に必要な情報を教育委員会から学校に送り、各校がその情報から地域的に必要だと判断したものを選択して保護者に送る、という2階層の仕組みになっている。和田氏は「当時としても画期的で、他にはないシステムだった」と話す。

ユーザ登録も工夫・簡便に

  携帯メール導入の際の最初の関門はユーザ登録だが、当時、全国的に小学生を狙った犯罪が相次いでいたこともあり、保護者の安全意識も高く、登録は順調に進んだ。また、同年に個人情報保護法が全面施行されたこともあり、個人情報に対してはこれまで以上に敏感な社会状況であることから、より安心で安全な専用のシステム構築を求める声も強く影響した。

  さらに登録についてはいくつか工夫もした。

  柏市では、新入学時、スクールメールの登録方法について保護者にプリント配布する際は、QRコードも掲載、そこから携帯電話で読み込み、直接アクセスして登録できるようにしている。さらに、登録者が殺到する4月から5月にかけ、専用のサポートデスクを設置。携帯電話の種類による登録方法の違いなどに対応した。質問は、2か月間で約60件程度あるという。

  導入当初は主に「安心安全」確保のための一斉情報配信システムとしての活用であったが、導入が進む中、クラスごとや学年ごと、部活動ごとの連絡配信システムとしても活用したいという要望が学校現場から強まり、「スクールメール」はこれらの要望に応える形でバージョンアップ、より使いやすいシステムとなった。新入学時に一度登録すれば、3月31日に自動的に最終学年が削除され、学年が繰り上がる機能も使い勝手が良いと好評だ。

安全情報25% 学校情報75%

  平成22年度9月に導入、夏季休業期間の講習後、新学期から早速活用が始まった。バージョンアップにより、これまでしたいと考えていたことができるようになり、配信数も飛躍的に増えた。

  今では、安全情報25%、学校関連情報75%と、コミュニケーションツールとしての活用が多くなったという。

  バージョンアップにより、かねてからの要望であった送信先のカテゴリ分けも実現、学年ごと、クラスごと、部活ごとの連絡メールが可能になり、よりきめ細かい情報が発信できるようになった。携帯電話から送ることができるようにもなり、校外学習先から保護者に直接子どもたちの様子を送ることもできる。

  また、これまで、配信の仕組みは、教育委員会→学校→保護者、という流れのみであったが、教育委員会から保護者に直接メールを送ることができるようになり、緊急性もさらに高まった。

学校評価にも

  これにより、一刻も早く知らせなければならない情報について一斉に配信できるようになった。

  「アンケートシステムも使えるようになり、保護者とのコミュニケーション手段が増え、ある学校の管理職からは、これを学校評価に活用してみたいという要望も届いている。また、市立高校では、保護者だけではなく生徒らへ直接配信することも実現した。今後は、スクールメールというプラットフォームから、アイデア次第で様々な活用方法が生まれてくるのでは」と期待をよせる。

旭市教育委員会

校務支援システムの活用手段として導入
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榎澤茂氏

  千葉県旭市では昨年度より、連絡メール配信システムを順次導入、本年度から全小中学校20校で活用が始まった。旭市教育委員会学校教育課でICT関連の構築を担当する榎澤茂氏に、メール配信システム「スクールメール」導入の経緯と活用状況について聞いた。

 榎澤氏が学校教育課に着任した平成19年度当初、学校現場や指導主事から早々に上がってきた要望が「連絡網に変わるメール配信システムの導入」であった。「学校現場では教育をする以外の仕事が大変多い状況だった。そこで教育委員会では、教員の事務処理負担を少しでも軽減できるようにシステム化していかなければならないと考えた」と述べる。

  既に市としては不審者情報や災害情報などの一斉連絡システムが稼働していたが、そのシステムをそのまま学校に活用するにはクラスや部活などでのきめ細やかな配信には適していない面があった。また、一昨年度には新型インフルエンザの流行もあり、体温の計測を毎朝義務付ける学校が増えた。その集計をメール連絡網でできるようなシステムであることも求められた。

  検討を重ねた結果、平成20年度のスクールニューディール構想による補正予算により、旭市でも教員全員に校務用PCが配備され、校務システムも導入。それに伴い「スクールメール」は、校務システムで活用するアプリケーションのひとつとして一括導入された。

導入してからすぐに使える

  PC等機器整備の完了が年度末ぎりぎりだったこともあり、実際の活用は、1学期の途中から。既に新年度から無料のメール配信システムを独自で活用している学校もあり、平成21年度は約半数程度の学校でスタートしたが、実際にスクールメールを活用している学校の様子を見て、早くから導入しておけば良かったという声も上がったという。

  スクールメールならば、年次更新やクラス替え機能など、入学時に一度登録すれば、メールアドレスを変更しない限り、自動的に更新できる。また、PCや携帯、保護者や祖父母など、児童生徒1人につき複数のメールアドレスを登録することもできる。

東日本大震災で 安否確認に活躍

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ケータイからも送ることができる
ので校外学習時・緊急時に便利

  3月11日の東日本大震災では、旭市にも被害が及んだ。被害が大きかったのは、沿岸地区にある飯岡小学校、飯岡中学校だ。両校では、児童生徒の安否確認や家庭との連絡にスクールメールが大いに活用された。

  スクールメールを使えば、数分程度で全員一斉に連絡することができる。携帯電話各社の基地局の被災状況によりメールが届く時間は異なるものの、一定時間経ても開封されない場合は、再送信もできる。

  「学校の電話回線は1〜2本程度。全教員が同時に連絡にあたることはできず、やむなく個人の携帯電話を使用している状況だった。また、必要な連絡を周知させるためには何度もかけ直さなければならないなど、大変な時間がかかっていた。スクールメールの活用で、電話を使った個別連絡は最後の手段として活用することができ、より短時間で確実に情報発信することができた」

  スクールメールでは、携帯電話を使って保護者にメール配信ができる。停電時など学校のPCから配信できない場合に備え、携帯からも連絡配信できる点は、有事の際にも役に立つ。

  スクールメールは、電話連絡網に代わる使い方以外にも、様々な使い方がある。榎澤氏は今後について、「教員全体のリテラシーが上がれば、学級通信をメールで配信する、という使い方も出てくるのでは」と話す。

印西市教育委員会

学校情報を提供するツールとして成長
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松本博幸氏

 千葉県印西市では、平成22年度、全小中学校29校(小学校20校、中学校9校)に、校務用PCを配備、校務支援システムやメール配信システム「スクールメール」を導入した。安全情報の提供という目的で導入した「スクールメール」は、現在では各校が様々な目的で日常的に使っているという。導入の経緯とスムーズな運用のポイントについて印西市教育センターの松本博幸指導主事に聞いた。

導入のきっかけ

  松本氏は「学校において情報伝達手段は、数多く持っていることが重要。そこで紙やWeb掲載のほか、電話連絡網に代わるメール配信システムの導入にも着手した」と話す。数あるメール配信システムの中、スクールメール導入に至った第一の理由が、新規登録の手間が簡便であるなど、使い勝手の良い点だ。

  「メール配信をする方法はいろいろあり、最も安価なのが、メーラーを使った一斉配信。これは、担当者の負担がものすごく大きい。正確さを期すために保護者のメールアドレスを紙でもらい、それを住所や学年、兄弟姉妹関係など、情報を登録する際にカテゴリ分けする作業が煩雑で、校務の合間を縫ってその作業を進めるのに多くの時間がかかっていた。この手間は二度と繰り返したくなかった」

  その点、スクールメールならば、保護者からの携帯電話やPCから簡単に登録できる。クラスや学年などのカテゴリ分けも同時にできるため、すぐに活用できる。

  進級処理が自動化されている点も便利だ。以前は手作業で進級処理をしたこともあり、膨大な手間が必要であった。スクールメールならば自動的に進級し、名簿が書き換わるので業務の効率化につながる。

  過去には、市一括で一斉メール配信システムを導入していたこともある。しかしクライアントPCにインストールするタイプであったため、メール配信作業ができるPCが限られるという不便さがあった。スクールメールならば、送信する端末を選ばずにいつでもどこからでもメールを送ることができるため、活用の幅が広がりやすい。

  個人情報保護がクリアになる点も選定のポイントの1つだ。市のポリシーでは、個人情報は教育委員会で管理する必要がある。無料のメール配信システムでは、アドレス管理を外部に委託する形になり、市のポリシーに反する。その点もスクールメールはクリアしている。

校外学習で活用広がる

  導入後、活用の浸透も速かったという。

  スクールメールを全校に一斉導入したのは、平成22年の6月。夏季休業期間中に講習を行い、各校事情で順次活用をスタートしたところ、年度末には全29校中27校でスクールメールが稼働した。

  「当初は安全情報の配信を主体に考えていたが、導入時講習後、早い学校では1か月以内に各校の独自情報の配信が始まった。緊急時の対応を超え、学校からのきめ細かい情報提供のためのツールのひとつに成長しつつある」と言う。

  具体的には、体育祭や修学旅行、校外学習の案内や、奉仕活動、家庭教育学級のお知らせ、学級閉鎖や臨時休業、地震の際には避難所開設のお知らせや下校時刻の変更、寒波に伴う対応、資源ごみ回収など、緊急性を伴うものはもちろん、従来ではプリントで配っていた内容も配信されている。特に校外学習などの多い10月には活用頻度が上がった。

  「3月に起きた地震の際には、電話が使えなかったことから電話連絡網が使えず、スクールメールを使って子どもたちの待機場所やお迎えに関するお願いなど、保護者に迅速に情報を届けていた。ネット配信の強みが生かされた。導入した甲斐があった」

機能の限定で運用スムーズに

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校務支援システムと連携

  スムーズな運用のポイントは何か。

  「このシステムを使う意義を理解してもらい、それを実現する機能だけを見せることで、誰でもすぐに使い始めることができるようにした。使い慣れてくるうちに、こんな機能が欲しい、こういうことをやってみたい、という要望が学校から上がるようになる。そのとき初めて他の機能を見せるようにした」

  このような流れとしたのは、導入前、幅広い年齢層からの反応を検証したことにある。

  「選定する際は、幅広い年齢層の教員と一緒に、様々なアプリケーションやシステムを見てきたが、その際に評価が低かったのは、多機能のものだった。便利かもしれないがよくわからない、という反応が多かった」

  そこで、多様な機能は持っていたとしても、初期導入時には機能を限定、当初はログインしてメール作成画面を選び、送信ボタンを押すだけの、初心者でも迷わない使い勝手とした。これにより、すべての教員にとって最初の一歩が楽になった。

システム統一で情報伝達迅速に

  スクールメールは、各校ニーズに合わせてカスタマイズができると同時に、市内で同じシステムを使うことができる。各校のメール配信システムを統一することは、様々なメリットを生む。

  「これまで各学校は、教育委員会のメールやFAXの情報から文面を作成して保護者に送っていた。スクールメールを使えば、教育委員会から学校向けに防犯情報を送ると、各校では、その文面をそのまま使って学校から保護者に送ることができるようになり、教育委員会からワンストップに近い形で各学校に情報を流すことができる。これは迅速で正確な情報伝達につながる」

  さらに、システムの統一により、想定されるトラブルに対する解決法もある程度予想がつくため、トラブル対応もスムーズになった。

講習は毎年実施

  講習は年1回、年度始めに行う。対象は教頭と情報主任、安全担当など。

  本格的に稼働して2年目を迎えた今、学校の反応はどうか。

  「導入当初は覚えることが多くなった、という声もあったが、今では便利さを感じている教員が増えている。防犯情報を正確・迅速に全学校に送ることができれば良いと考えての導入だったが、校外学習の際の学校への到着時間や持ち物確認、行事のお知らせなど、各校ニーズで自由に使われている。今年度は、より様々な学校で様々な活用方法が出てくるのでは」

【2011年6月6日号】


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