最新IT教育―実践、成果を報告―ICT|フィンランド教育 |
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太田氏は、小中高等学校で英語教育に携わる教員に向け、75分間を全て英語で講演。「留学経験はなくても、学び続ければ英語が使えるようになるということを示したかった」とその意図を話す。「英語を習得する秘訣は、学校を卒業してからも学び続けること。ピアノは、練習を止めると弾けなくなる。英語もまた同様」と、学び続けることの重要性を呼びかけた。
「言語習得は、曖昧さに耐えながらその曖昧さを減じていく営み。日本人は英語ができない、と思い込みすぎではないか。その思い込みは、これまでの高等学校現場での英語教育が、文法を知識として身に付けさせることと、訳読することを中心にしてきたことが原因。いまだ、かつてのラテン語教育と同じ手法(文法訳読)を使っている高等学校も少なからずあり、読解はできるが、音声面での習熟が全くできていない生徒を生み出すという実態がある。英語をコミュニケーションの手段として活用する能力を身に付けさせることができていない。この点を抜本的に改善することが、日本の英語教育に強く求められている」。
テストの在り方については、「『できない部分を指摘する』テストから『できるようになったことを明らかにする』テストに改善する必要がある。動機付けのためにも授業やテストにおいて、子どもたちに小さな成功体験を重ねさせることが英語教育に求められており、その趣旨は新学習指導要領にも反映されている。学習者を大切にした英語教育改善になっている」。
コミュニケーション能力の育成に必要なことは、相手を大切に思う気持ちを基盤にしたインタラクションだ。その視点から、早い段階に子どもたちに身に付けさせたい英語として @繰り返しを求める Aスピードをコントロールする B例示を求める C自分が理解できないことを伝える D相手に説明を求める などの英語を例示、「社会に出たときに活用できる英語」を目標とした学びが必要であるとする。
小学校で始まる英語は学級担任主導で行われるが「新学習指導要領では、小学校教員が英語に堪能であることを求めているわけではない。英語に自信のない先生に配慮したものになっており、自信がなければ、一人の学習者に立ち戻り、時間をかけて学び直せば良い。児童・生徒に可能性を信じて学び続けるという学習者としてのモデルを示すことが重要。先生自身が学ぶことに楽しさを感じることができれば、それは子どもたちに伝わっていく。安心して子どもたちと一緒に学び直してもらいたい」と話す。
中学校では、これまで週3時間であった英語が、新学習指導要領では週4時間に増える。これは、中学校3年間で学ぶ英語の時間が1年間分増えるということ。しかも内容は、そう大きくは増えていない。
「増えた時間は、英語を『活用』する時間と考え、英語を使ってコミュニケーションを図る活動に使ってほしい」と、その目的を明らかにした。
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太田氏は各国の英語教育事情についても紹介した。
より良き納税者育成のためにも、教育の立て直しが急務であったフィンランド。その人口の少なさから、「すべての人に対して教育の失敗は許されない」というスタンスが国民の総意であることが教育改革の成功に結びついたと指摘。さらにフィンランドでは、海外のテレビ番組もゲームの説明書もすべて英語のまま。英語を使えないと生活が楽しめないという条件もあり、人々の英語力は、日常的に活用できるレベルとなっている。また、ブリティシュ・カウンシルの報告によると、中国では、毎年2000万人の英語話者が生まれている。これは6年で、日本人全員が英語話者になることを意味する。大学教育について言えば、全ての学生がCET4級(英語検定で2級〜準1級程度)の取得が義務付けられている。
さらにヨーロッパでは、複言語政策の結果、外国語である英語に堪能な人が急速に増加しており、「世界の共通語としての英語の重要性や地位はこれまでにないものになっている。つまり、世界中が英語を使ってコミュニケーションしている。今後は、英語圏以外の人と英語でコミュニケーションする必要性がぐんと増える」と、日本の英語教育が担う重要性を指摘した。
【2010年2月6日号】