来た来た!! 新教科「情報」
聖心女子大学 永野和男教授
Interview
教育マルチメディア新聞2002年1月1日号
 新学習指導要領「情報」解説書の編集を手がけた永野和男・聖心女子大学教授に話を伺った。

 −改めて、情報A〜Cの特徴を教えてください

 「情報」を必修にするにあたり、「知的な水準を要求しない優しい内容」の科目を設置する必要があります。中学・技術科の内容を8割程度含む基礎的な科目が情報A。情報Bでは「裸のコンピュータ」つまりメカニズムやシステムを理解しながら問題解決を図っていきます。一方、情報Cではメカニズムについて学習を深化させるよりは、「情報のデジタル化」を理解し社会を対象とした調査活動に重点を置きます。

 −カリキュラムは

 現在、情報A・B・Cとも1年生での履修が可能となっています。しかし、累乗や正規分布、確率という数学的な計算を履修していたほうが、情報B(3)のシミュレーション演習などにおいて仕組みを深く認識することができるでしょう。
 −各地で研修が行われていますが、情報科の教師に求められるものとは

 コンピュータの処理能力の是非が求められると思われがちですが、「情報」科の教師はインストラクターではありません。
 必要とされる意識が2点あります。ひとつは、「私生活の中でも積極的に情報を収集し、情報社会の中で生き抜く」という自身の生き様。
 ふたつめは「マネージャー」として子どもの活動を支援するという姿勢です。クラブ活動の顧問としての役割に近いと思います。あくまで活動するのは「生徒自身」ですから。

 −具体的にどのような指導を心がけていけば良いのでしょうか

 構想し難いと思いますが、指導法や展開が近い科目として高校「工芸」の授業をイメージして頂ければよいと思います。
 高校生当時、工芸の授業で「100本の竹で芸術的な作品を製作するように」との課題が出されました。制作方法を直接教わることはなかったものの、作品を仕上げる過程で、竹の削り方や接続の仕方を自身で習得していったものです。

 同様に現在、教育学の授業のなかで「教材づくり」を生徒に実践させていますが、6時間のうち、教材に関して提案や助言はしません。作業経過を報告させたり、改良点を考えさせたり、という場を提供しているだけです。チェックや声掛けを適宜行うことによって、学生は自身で作品を作り上げていくという目標を見失うことなく、同時に度重なる改良を繰り返したポートフォリオを作成することになるのです。

 このように、生徒が積極的に情報を活用していくための支援を行っていくことが、教師の役割であると思います。
 先ほど、文部科学省・メディア教育開発センターより「情報」科教員向けVTRを発行しました。ひとつの指針となると思います。(問合せ=043・298・3125)

 −指導要領が変わることで評価や入試はどのように変化するのでしょうか

 今後は、記憶・整理といった能力よりも総合的で創造的な能力が要求されるようになります。新学習指導要領においても、そのような観点が強調されています。

 具体的で実践的な問題に対し、情報を収集・分析し、適切に判断して解決できる応用力、すなわち「実践力」です。入試では、単に知識テストで高得点を取る人よりも、頭と体と心のバランスのよい人を求めるようになるでしょう。
 大学入試も、この7、8年の間に大きく変化することが予想されます。8年ぐらい先には、少子化によって進学希望者のほとんどが、大学に進学できる計算になるので、いわゆる競争試験としての入試は意味合いを持たなくなりそうです。

 面接や討論を中心とし、学校でのプロジェクト活動や社会活動の経験、語学力や情報活用能力、コミュニケーション能力などに評価基準が置かれることになると思います。その意味で、自身の興味や関心のもとに探索的に勉強したり、複数の回路で思考するほうが、単に表面的な知識を知っていることよりも重要になるのです。

 いずれ「情報」が入試科目となると、Webページを高校在学中に作成し、入試においては口頭試問におけるプレゼンテーションやWebページの修正を行うなど、実践的かつマルチな能力が図られることになるでしょう。