文部省予算・平成16年度
子どもの活動拠点作りに70億円
全市町村にコーディネータ
文部科学省は16年度予算で、新規に「子どもの居場所づくり新プラン」を開始する。小学校4000校の空き教室などに活動拠点を設け、安全管理員・活動アドバイザーを配置し、教室運営を企画するコーディネーターも全市町村に配置する。また、IT関係では、「ネットワーク配信コンテンツ活用推進事業」を新規に。各学校でネット上のコンテンツ利用について研究する。
〈健全育成〉
親による子どもの虐待や登下校時の誘拐・声かけなど、子どもの周辺に危険な状態が続発している中で、文部科学省は「子どもの居場所づくり新プラン−地域子ども教室推進事業−」(70億円)を新規に開始する。放課後や週末に、小学校の空き教室などに子どもの居場所(活動拠点)を設け、小中学生を対象に、スポーツや遊び・文化活動、勉強会、パソコン教室などを実施する。
地域の大人や社会教育関係者などが安全管理員・活動アドバイザーとなり、初年度は主に1学年2学級以上の小学校など4000校(3年間で1万4000校)で実施。1校あたり146万円の人件費が措置されるが、地域での子育て環境復活に向けて、ボランティア的な関わりも求められる。子どもの居場所や教室運営をプランニングするコーディネータも全国3200市町村に一人ずつ配置。コーディネータ一人当たりの人件費は31万5000円で、コーディネータの要件は特に定められていない。
3月末までに各市町村から計画を上げてもらい、早い市町村では4月にも実施される予定。
なお、子どもの安全確保に対する先行的な取り組みは既にいくつかの市町村で行われている。東京・品川区は、各学校に専任指導員1名などを配置し、学年ごとの勉強会や英会話・パソコンなどの教室を実施。新潟市は、運営スタッフと最低3名のボランティアが各校の開催場所に配置され、スポーツや昔の遊び、地域学習などを実施。また、名古屋市は運営を名古屋市教育スポーツ振興事業団へ委託し、事業団から運営指導者を各学校へ配置。毎日放課後や土曜日、遊びや自主的な学習、体験活動などを実施。
〈確かな学力の向上〉
また、確かな学力の向上のため、新規に「学力向上支援事業」(6億2163万円)を47地域で実施。教育課程実施状況調査の結果を踏まえ、学校全体で個々の児童生徒へのきめ細かな学習支援・相談を可能にする体制を研究する。
さらに、豊かな心を育成するため、読書活動を一層推進するため、「学校図書館資源共有ネットワーク推進事業」(5億735万円)を47地域で実施。地域内の学校図書館の蔵書のデータベースやネットワークを活用した優れた教育実践の収集、公共図書館との連携について調査研究する。
〈IT活用〉
IT関係では、「ネットワーク配信コンテンツ活用推進事業」(4億9828万円)を新規に実施。教育用イントラネットが整備されている自治体27地域を3年間指定。ネットワーク上で民間の教育用コンテンツを購入・利用できるシステムを整備する。コンテンツ履歴収集サーバ、ユーザ認証システムなどが利用・検証され、ネット上の教育用コンテンツを利用した教育がどういった授業・場面で有効なのか、といったことが各学校で研究される。
また、実社会でITを高度に活用できる人材を育成するため、「IT人材育成プロジェクト」(1億555万円)を新規に実施。1専門高校など10校を3年間指定し、ネットワーク構築やセキュリティ確保など、実務的なカリキュラムに基づく教育を実施。2外部の専門家を迎え、最先端のIT技術を指導する合宿形式のセミナーを全国2か所で10日間程度開催する。ITスキルの高い60名の生徒を選抜して実施する。
私立高等学校等の施設の整備費に対する補助として、「高機能化整備費補助」(8億9400万円)の枠で、情報教室や校内LANの整備費の1部(補助率3分の1以内)を補助する。また、「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」(13億7500万円)でコンピュータなどIT教育設備の購入費の1部(補助率2分の1以内)を補助。
〈キャリア教育〉
産業界の構造変化や雇用形態の多様化に伴い、小学校段階からキャリア教育を推進していくことが求められている中、「新キャリア教育プラン推進事業」(1億4000万円)を新規に。小中高一貫した47地域を指定し、実践協力校で指導方法などを研究。全国レベルのインターンシップ連絡協議会、キャリア教育推進フォーラムも開催する。
【2004年2月7日号】