rotate、darken…スクリプト言語を打ち込み、アニメーションに動きや濃淡、音を加える。ハイパーカード上に独創的な世界を産み出す活動が、授業の一環として行われている。
コンピュータを使ったユニークな授業を展開しているのは、閑静な住宅街に位置する東京都立国際高等学校。国際高校は、外国での生活を経験したことのある生徒が全体の6割を占めるというインターナショナルな学び舎。平成元年の創立以来「個人の表現力」を大切に考える校風は、個人の作品に反映されている。
同校では2年次よりコンピュータを使った授業を週に2時間展開。デザインやコンピュータミュージックなどの題材がカリキュラムに組まれていることから、3階にあるコンピュータ室にはMacを搭載したコンピュータが43台設置されている。
2年生の1学期には、アップルワークスで文書作成や表計算、インターネットなどの基礎的な技能を学習。活動の過程で操作を習得する。一連の機能を学ぶと早速、「小笠原のまち紹介」や「渋谷のぐるめ情報」、「海外在籍邦人子女」といった個々のテーマをA4の枠にまとめる。作成の際には、フォントサイズ、ペイント、見やすいグラフ、配置など、アピール効果を考えて構成していく。
「一番の悩みどころはテーマの設定でしょう」とコンピュータ指導担当の前川法久先生。制作に取り掛かる際、前年までの作品は例示しないという。「出来上がった作品を参考にすると、独創的な作品は創り出せませんから」。
2学期に取り組むアニメーション制作も、まずはテーマの設定から。「人と同じ作品は創らない。独自の発想」を心がけ立案したテーマはまさしく十人十色。サッカーのPK戦など複数の動きを取り入れた作品、コメディマンガや昔話、英語の詩をオリジナルでストーリー化した作品、絵描き歌やもぐらたたきなど効果音と画像を同時に出力する作品などバラエティに富む。
アニメーション制作では、文書・イラスト・音・データなどを処理するソフトであるハイパーカードを利用。プログラミングはスクリプトで行う。「英単語で簡単にプログラミングすることができ、かつ形状ある作品を生み出すことができる」(授業担当の正田雅人先生)ため、ハイパーカードによるアニメーション制作をカリキュラムに組んだという。プログラミングは、活動する際にTT制で助言を加えていく。が、主人公の動作やふきだしに表示される言葉の間合い、音楽のスピードなどは、生徒がそれぞれ観るものの立場になった際に見やすいかどうかを考え調整していく。自ら作曲した楽譜片手に、コードを入力していく生徒、爆発音の間合いを計り「wait」の秒数を計る生徒…と作品に対する「凝り」は尽きない。
主人公が旅をする際、服装や行動を選択できる複数のボタンを設け、選択により異なるストーリーが展開されるといったロールプレイングゲームも授業から誕生している。
音楽、英語、芸術、情報技術などの分野が融合するアニメーション。評価は、との問いに「スクリプトのテクニックをいかに使っているか。そして重要なのは、柔軟な発想に基づく表現力です」と正田先生。
生徒たちは課題を提出し、3学期にはホームページ作成に取り組むという。
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