小中学校の理科離れが叫ばれて久しいが、学校のIT化も着実に進んでいる。今やコンピュータを駆使し、小学校3、4年生でメールを使いこなす小学生も少なくない。茨城県江戸崎町立江戸崎小学校では、全学年を対象に「理科研究生制度」を実施しており、研究生は教材機器を自由に使うことができる。機器の中でも昨年人気が高かったのが「オリンパス光学のデジタル顕微鏡MIC−D」だ。
■ 理科はロマンだ!
江戸崎小学校は、周囲の林や河川から学習用の資料の採取が出来る豊かな自然環境に恵まれている。コンピュータ教室には20台のPCが設置、LANも敷設済みだ。昨年は同校の140名が日常の自然などをテーマに自由研究に取り組み、5・6年の理科研究生12名を対象に光学顕微鏡(CXシリーズ)12台とMIC−D1台を使い、生きた微生物などの観察を行った。
指導にあたった幸田尚志先生(教務主任)は、「理科はロマンだ!」をポリシーに、実践的な授業を展開している。「MIC−DやPCのソフトについては、私から細かいことは教えません。子ども達に自由に使わせています。子ども達のミクロの世界に対する関心は高く、光学顕微鏡を覗いたりPC画面を見たりする児童のまなざしは、まるで一人前の研究者のよう」と目を細める。
各々光学顕微鏡を使い微生物を観察、サンプルをデジタル顕微鏡に移し、PCのモニターを使って、教師や他の児童に説明する。理科研究生全員に説明する際にはLCDプロジェクタを使う。
■ デジタルは便利だね
子どもたちは授業の中で「デジタル化すると、PCに簡単に取り込めて皆に説明するときに便利だね」「でも、画像は光学顕微鏡で見たほうがきれいだよね」と、光学顕微鏡とデジタル顕微鏡の違いをごく自然に認識していくという。
「デジタル化の長所、短所両面を理解することは、今後益々発展するであろうデジタル機器を使っていく上で大切な知識」と、幸田先生は指摘する。
学校で「顕微鏡を見る」という機会はそう多くないのが現実だ。しかしその数少ないチャンスが発端となって「未来の科学者」が生まれる可能性もある。幸田先生は、「これら研究に情熱を燃やす児童の中から将来ノーベル賞を受賞する研究者が出るかもしれない。そのためにも児童に快適な研究環境を提供していきたいですね」と、理科教育の可能性に夢を馳せる。
【2003年10月4日号】