英語コースを設置して約20年。2年次には約2か月間海外留学、世界の若者と交流するプログラム「世界教室」も主催している関東国際高等学校は今年度から3年間、文部科学省の「スーパー・イングリッシュ・ランゲージハイスクール」に指定され、わが国では初めて中等教育に「トマティスメソッド」による聴覚トレーニングを取り入れ、リスニングやスピーキングに成果をあげつつある。
■ 外国語の高い周波数
トマティスメソッドは、各民族の言語により優先的に使う音域(周波数帯)が異なり(図参照)、その音域を聞き取れるような耳を作れば、楽にその言語を聞き取り発音できるようになる、とする。
例えば、日本語の周波数帯は125から1500ヘルツ、これに対しイギリス英語は2000ヘルツから1万2000ヘルツで全く重ならない。米語も500ヘルツから3700ヘルツと高い。そうした音域を発音するために、日本語は喉の後放で発音し、英語は口先で発音するなど、発音方法も異なっている。
自らトマティスメソッドを体験しその利点を実感している英語科の三好洋子先生は、「音域が違うので、日本人が英語を聞き取りにくいのは当然だったのです。聴覚トレーニングをすると、英語の音域を聞き取れるようになり、・英語の耳・が誕生するわけです」
今年度は、英語コース1年次の1クラスに導入。4月から1学期間、毎週3日・1日90分集中トレーニング。生徒は「l」と「r」などの子音も聞き分け、発音できるようになった。ある生徒は「聞き取れる語句が増えてくるのが実感できます。今は日本やネイティブの先生たちと英語で話すのが一番楽しく、大学は留学したい、と思っています」と意欲的だ。
聴覚トレーニングの授業は、頭の上に当たる部分にもスピーカーのついた専用のヘッドホン、教育用カセット、機器を使用して行われる。生徒は、高周波数帯が聞き取れるように設定されたそのヘッドホンをつけ、教育用カセットに従って「magazine」「position」などと発音。唇の両側に手をそっと添えて、前に突き出すようにして、口先で発音する訓練もする。トレーニングの合間に適宜モーツアルトの名曲が流れ、耳をリラックスさせる。
続いてオー・ヘンリーの劇を題材にディクテイション。生徒に一部の語句が空白になったプリントを渡し、三好先生が英文を読み上げ、語句を聞き取らせ発表させる。ここまで聞き取れるのか、というほど高い正解率に驚かされた。
武田安宏教頭先生は、「当学園はコミュニケーション能力の育成に早くから取り組んできた。来年度は1年次全クラスでの実施も考えたい」と今後の展開を語る。
【2003年9月6日号】