0.1秒の壁に挑む 
神奈川県立磯子工業高等学校



 光を閉ざした会場。浮かび上がる幅30センチの曲線。「ピッ、ピッ」スタートの合図が鳴り響く。選手たちは固唾を呑み、4輪の進む先を見据える。

 新年1月13日、北海道札幌国際情報高等学校でジャパン・マイコンカーラリーが開催。メカトロ技術の基礎・基本の習得、自発的・創造的な学習態度の育成を図るとともに、ものづくりによる課題解決型教育を推進、新技術への夢が育まれる。主催は全国工業高等学校長協会、北海道工業高等学校長会。後援は、北海道、北海道教育委員会他。協賛は日立化成工業。高等学校教員らで構成されたマイコンカーラリー実行委員会が主管となり運営する。

 全国大会には、12のブロックから、規定のCPUにオリジナリティあふれるハードを装備したマイコンカーが集結。2台並走のタイムレースによる予選と、成績上位32台による決勝トーナメントで競技が行われる。
 昨年11月24日に行われた南関東大会では、神奈川県磯子工業高校が1位、2位を独占。全国大会へと駒を進める。

 「0・1秒を短縮するために、生徒たちは1年間部室と実習室を往復しています」というのは同校・設計製作部の尾花健司先生。課題研究の一環としてマイコンカー製作に取り組む学校が多い中、同校では部活動の一連の活動として参加している。

 部員は1年生と2年生の4人。ロボット相撲やロボットランサーなど、年間13もの大会に出場している。設計期間が短く、費用も限られているので、ひとつの基板をフル稼動。しかし機体にはオリジナリティを加える。これは「設計から操作まで自分の責任下で行うことに対する意識を高めるため」(尾花先生)。グループ参加が可能な大会でも、メインとサブと役割を決めて大会に臨むという。

 同校では部室でハードの設計を行い、実習室でプログラミングの調整、走行を行う。実習室には本コースの1/3程度のコースを設置。ストップウォッチを刻みながら、7秒の壁に迫る。

 「カーブをいかに早く走行するかが大切」と南関東大会優勝者の佐藤辰哉君。タイムを確認すると、すぐさまプログラミングの調整に取り掛かる。
 ハードについても入念なチェックが行われる。タイヤは、シリコンやスポンジなどを注入しながら、グリップ力を調整する。ギヤも12種類用意。ひとつの基板に速度を加えていく。

 本大会には、生徒とともに尾花先生も一般枠で出場。度重なる大会で知り合った「戦友」たちと情報交換をしながら、技術の向上に努めているという。「会場の裏でネットワークが築かれるんですよ」。尾花先生は、ネットワークの中から得た情報を夜遅くまで生徒たちに伝えていく。部室の灯りは、冬休みも燈る。