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INTERVIEW 
PISA調査

──PISA調査で「課題」明確に「次の手」打つ
「教育の成功」が経済成長に影響与える

OECD教育局指標分析課長
 アンドレア・シュライヒャー氏

アンドレア・シュライヒャー氏 の写真

 OECD(経済協力開発機構)の教育指標事業の一環として97年より開始した「生徒の学習到達度調査」(PISA=Programme forInternational Student Assessment)。

読解力を中心とする第1回調査を2000年に、数学的リテラシーを中心とする第2回調査を03年に、科学的リテラシーを中心とする第3回調査を06年に実施しており、実施ごとに各国へ「PISAショック」という新しい波紋を投げかけている。本年実施予定の4回目は、OECD非加盟国を含め約70カ国・地域もの参加が予定されており、世界的な調査となる。2月2日、国立教育政策研究所は、アンドレア・シュライヒャー氏を招き、「PISA調査」から分析できる日本の教育について講演会を実施した。

 PISAは、3年ごとに実施される教育における世界的調査であり、15歳児の学習到達度を調べるもの。15歳時に到達している成績とその後の成功の割合には大きな関係がある点から、15歳までの教育水準を評価するに至った。

 PISAが何を対象に調査するべきか。当初はふたつの選択肢があった。

 ひとつは、「生徒に何を習得して欲しいのか」、もうひとつは「生徒が学習したことからどう推定し、初めて遭遇する状況にどう知識と技能を応用できるのか」。

 その結果、PISAでは後者を選択、現在、職業能力として最も需要が伸びている「非単純知的作業」に要する能力を評価対象とした。

 「PISAは不公平だ。これまで経験したことがない部分を調査している」と言われるが、これまで経験したことがないことを経験するのは、社会生活上当然のことといえる。

◇ ◇

 科学的リテラシーを中心とする第3回PISA調査では、各国において特徴が見られた。例えばフィンランドでは、成績が悪い生徒が少なく、米国では、成績が悪い生徒も良い生徒も他国に比較して高い。日本は、上位6か国の中に入っており、成績の良い生徒の割合が比較的高い。

 「成績が良い」生徒とは、科学的知識を認識、説明、応用できる能力を持ち、異なる情報と解説をリンクさせ、そこから得られる証拠で結論を裏付け、未知の状況において高度な考え方を示すことができる生徒を意味する。

 PISAにより、各国の教育の特徴も分析できる。例えばチェコでは、科学的知識の度合は高いが、科学的能力(探究心等)は低く、フランスとは全く正反対の傾向を示す。日本では、世界レベルで見ると各分野における差異はそれほどなく、特に知識の面で優秀である。また、科学の知識の重要性も評価、認識している。その一方、自分の生活にとって科学が重要な関係があるかどうかについては、OECDの平均以下にある。科学技術分野で能力を発揮したい、と願っている割合は極めて低い。「成績は良いものの自分の人生とあまり関連づけられていない」のが日本の科学教育の成果である、と分析できる。

 一方米国は、科学的な知識は低いが、その重要性は認識しており、科学を学ぶことが人生の成功において重要であると考えている。ここから「米国の科学教育は、知識はそれほど与えていないが、科学分野で頑張れば成功につながる、と考えている子どもを育成している」と分析できる。

◇  ◇

 各国の教育費用に関しては、正の相関性は見られるものの、全てが説明できるわけではない。例えばアメリカやイタリア、ノルウェーの教育費は高額だが、大きな成果として表れてはいない。

 また、韓国の教育費は高額、日本の教育費は少ないという傾向がある。その要因のひとつが、日本では1クラスの生徒人数が多いという点。多人数の生徒を教えることができる教員の質の高さと、それを土台とできる社会的なサポートが、教育費が低い理由のひとつといえる。また、シンガポールでは、教員研修に100時間を費やしている。

 保護者の期待が高いと教員が感じているのも日本の特徴。最も高いのがスウェーデン、次にニュージーランド、アイルランド、日本と続いている。

 また、自分の学校において意志が決定できるシステムは重要だ。教師の採用・選択など、学校の自主性が尊重される割合が高いほど、科学の習熟度が高いという調査結果が出ている。

◇  ◇

 かつて、「教育」が成功していなくても労働できる市場があった。それが今は、吸収する余地がなくなっており、所得格差につながっている。この傾向は、日本以上に世界中に拡大している。教育の成功は、経済成長に大きな影響を与える。

 PISA調査の結果を元に、各国では改善が試みられている。成功要因は変化しており、各国の教育制度を分析することで何が成功要因なのかを知り、自国の教育施策に反映させたい。その意味で、PISA調査は今後も変化や改革をサポートしていく。


【2009年2月7日号】

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