H21年度概算要求
──小中高等学校等「デジタルテレビ」整備
補助金75億円計上3年間で対応を
平成23年7月のテレビ放送の地上デジタル化完全移行に伴い、政府の関係省庁連絡会議において「地上デジタル放送への移行完了のためのアクションプラン2008」(平成20年7月)が決定された。それに伴い文部科学省では、学校や公民館等のデジタルテレビの整備に関して、平成21年度概算要求として75億円を計上している。文部科学省生涯学習政策局の椿泰文参事官に、詳細を聞いた。
RGB端子付き42―50インチを推奨
「学校に設置されている約60万台のテレビ受像機のうち、地上デジタルテレビ放送に対応しているものは現在約1%に過ぎません。対応が遅れると、学校において一切のテレビ放送が視聴できなくなります。各教育委員会や学校関係者からは、国の緊急かつ積極的な財政支援が必要との声もあり、生涯学習政策局では、平成21年度概算要求として、小中高等学校等における地上デジタルテレビの整備に対し、新規で75億円を補助金として計上しています」。
これまでテレビの整備に関しては、地方交付税措置であったが、地上デジタルの移行完了までの3年間で緊急に整備が必要なことから、補助金として要求する。これは、各自治体からの、補助金のほうが予算計上の際認められやすいとの声を反映した。
デジタル化に関わる補助金の対象としては、アンテナ等工事費、デジタルテレビ整備費、デジタルチューナー等購入費が対象で、その1/2が補助金となる。10年以上の古いテレビの場合は買い替え、10年未満のテレビに関してはチューナー等購入費として積算。
概算すると、現在あるテレビの約2/3が買い替え、1/3がチューナー購入の計算となる。
なお、高等学校と幼稚園に関しては、1校(園)につき1台買い替えとして積算。
3年間で必要な経費としては、アンテナ工事費等に131億円、デジタルテレビ整備費に507億円、チューナー購入費に52億円。デジタルテレビに関しては42インチのテレビで1台15万円程度、アンテナ等工事費に関しては1校20万円程度での積算となっている。
椿氏はテレビ画面に関し、「コンピュータや実物投影機を接続するための入力端子(RGB端子)があるもので、教室後方からも見えるよう、画面は最低40インチ以上の大きさ。できれば50インチが望ましい」と述べる。
「アナログ放送の円滑な終了に関しては国全体の取組であり、学校や公民館は優先してデジタル化を行う、という政府のアクションプランが既に出ています。
補助金については、現在、財務省と折衝中であり、最終的には12月に決定します。各自治体には現在、平成21年度から計画的に学校等のテレビのデジタル化を行うことをお願いしており、9月26日付で各教育委員会あてに文書『地上デジタル放送への完全移行に伴う学校等のテレビのデジタル化について(依頼)』を送付しました」。
平成20年7月1日に閣議決定された教育振興基本計画でも、「平成23年7月の地上デジタル放送への完全移行を踏まえ、その効果を教育において最大限活用するための取組を支援する」こととしている。
デジタルテレビの教育効果は大きい
デジタルテレビの導入は、番組を見るだけではなく、プラスアルファの活用を学校にもたらす。
「高画質・高音質な情報の提供による、児童・生徒の興味・関心を向上させる効果、PCやデジタルカメラ、実物投影機との連携により、インターネット画像やプリント、教科書の図表などを映し出すなど、知識・理解の定着を促進するなど、学習効果等に有用であることが、平成17年度から19年度の実証実験で明らかになっています」。
実証実験校における調査によると、授業中の挙手や発言が増え、理解度も深まった(平成18年度三鷹市立第一小調査)。また、生徒らの集中力は増し、学習意欲や課題意識の向上につながった(平成19年度 静岡県、兵庫県、富山県、船橋市調査)。デジタルテレビ活用による教員の負担軽減については、全ての学校において、負担が軽減されたという回答を得ている(平成19年度モデル校20校調査)。
文部科学省では、「デジタルテレビの効果的な活用に関す実践研究事業」(www.chidigi.jp)の中で、実証実験による過年度の指導案や授業シナリオを公開しており、年間40万アクセス以上と、関心の高さがうかがえる。
H19年度より予算措置開始している自治体も
東京都葛飾区や、埼玉県深谷市では、平成19年度及び20年度からデジタルテレビ導入のための予算措置を行っている。なお平成20年度はデジタルテレビに関わる教育効果をさらに広げる目的で、新たに全国5地区12校で検証中だ。
「2011年に、今映っているアナログテレビが映らなくなる。現場の混乱を避けるためには、向こう3年間で整備を終了するための早急な整備計画が必要です」と椿氏は述べる。
このほか、生涯学習政策局としては、地域で取組むIT安心利用推進事業を新規で予算要求。今年の社会教育法改正で、情報化の進展に対応した講座の開設等を市町村教育委員会の事務として明確化したことなどを受けて、啓発活動を行うボランティアの養成や、関連情報を掲載したウェブサイトの構築などを行っていく。全国64地域で実施する予定だ。
なお、初等中等教育局では、新学習指導要領移行措置用教材整備事業(概算額155億円)の中で、小学校外国語活動教具として電子黒板などを想定している。あわせて学校現場のICT化推進のきっかけとしたい。
(西田 理乃)
【2008年10月4日号】