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INTERVIEW 
新学習指導要領

  ── 「英語」「情報」は時代の要請
「総則」に「基本的な操作を習得」記載は画期的

メディア教育開発センター
 堀田龍也氏

堀田龍也氏の写真

 「総合的な学習の時間」が半減したことで「総合」は失敗だった、という意見もあるが、本当に「総合」は「失敗」だったのか。かつて「『総合』の目玉は『情報と英語だ』」と述べた研究者がいた。「必修か、選択か」で揺れていた高等学校教科「情報」は必修化され、推進派、懸念派両者ありながら、小学校英語の導入も、実質来年度より開始する。「総合」から始まり、新学習指導要領に辿りついたその経緯を堀田龍也氏に聞いた。

 新学習指導要領が告示され、小学校では「英語活動」が開始、中学校では「プログラミングと計測・制御」が必修化された。「情報」と「英語」は、平成14年の「総合的な学習の時間」からその取組みが始まり、次期学習指導要領では時間数が半減している。時間が減ったことで「総合」の重要度が低くなったように思えるかもしれないが、かつて「総合」の時間に入っていた「情報活用能力」の育成が各教科に取り入れられ、「英語」が必修化になったぶん「総合」の時間が減っただけ。実は一層重要になっている。

 10年前、小学生から大学生まで、一斉に同じ場所からコンピュータやインターネット活用が始まった。それが今、どの学年で何をすべきかがはっきりし、より現実的に地に足がついたものになった。中でも画期的なのは、「小学校」の「総則」に「文字の入力など」基本的な操作を「身に付け」、と記載されたこと。さらに移行措置により来年度から「総則」の前倒し実施が大前提となった。
 これまで「総合」に置かれていた活動が新学習指導要領で各教科に書き込まれたことは、教科横断的な活動を推奨してきた「総合」の大きな成果といえる。また、これまで高等学校の「情報A」では、文字入力をはじめコンピュータリテラシーに重きを置いた学習内容だったが、これがある部分は中学に、ある部分は小学校に落としこまれてきたことも成果のひとつ。

◇◆◇

 様々な意見がある中、小学校英語も必修化された。日本では高学年から、コミュニケーションを中心とした英語になる。
 アジア諸国では既に必修化されていることを考えると、向こう10年間日本では「慣れ親しむ」「体験させる」英語で留まる点には懸念がある。こちらも、「総合」のように、実践を積み重ねることでさらに次の学習指導要領で教科化される可能性もある。各学校では、そのつもりで取組む覚悟が必要だ。

 とはいえ、ALTを全ての学校で35時間派遣する、ということも現状では非現実的。学級担任の英語活動指導を支援していかなければならない。

 文科省から配布される「英語ノート」は標準教材として非常に重要だが、それさえあれば十分というわけではない。算数の教科書だけで算数を教える人がいないように、英語でも様々な教材が必要だ。

 効果的なのは、はっきり言って、ICT。ようやく普及したプロジェクター等ICT機器やDVD、デジタルコンテンツが小学校で英語を教える学級担任を支援する。これらを活用し、子どもたちの実態にあわせ、子どもたちにどう楽しく提供できるかが鍵となる。

 小学校英語で懸念されるのは、当初の「総合」と同じように「教えすぎは良くない」と思いすぎてしまう点。数多くの英単語に触れることは重要で、「英語嫌いにしない」やり方でさえあれば、英単語はどんどん教えて良いのではないか。「言葉」を知らなければ、コミュニケーションはできない。コンピュータ活用する際、文字入力は最初の一歩。単語の習得もまた同じと考えて良いと思う。

(西田 理乃)

【2008年5月3日号】

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