ストレスレスの「校務情報化」模索
情報漏洩や紛失、セキュリティポリシーの策定・運用方法など情報セキュリティをめぐる課題が注目されている。そこで今年8月、安心して学校の情報化を推進することを目的に、学校に求められる情報セキュリティの調査研究を行いその成果を社会へ還元する「教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)」が発足した。12月23日には東京国際フォーラム(東京都千代田区)を会場に、「平成19年度学校情報セキュリティポリシーセミナー」を開催する。同委員会の委員長を務めるほか、数々の関連団体の委員として校務の情報化を推進する藤村裕一氏に話を聞いた。
校務の情報化は、これまで文部科学省や経済産業省が中心となって取り組んできましたが、予定通りに進んでいるとはいえません。その一因は自治体の財務担当がその価値を理解・協力できていなかった点にあります。そこで財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)や独立行政法人情報通信研究機構(NICT)を中心に総務省でも現在校務の情報化を進めているところです。
APPLICが構築している地域情報化のためのプラットフォームを使えば、異なる自治体間でも転入出の処理や指導要録が電子化され、安全で簡単に使えるようになります。このプラットフォームを活用しながら、校務の情報化をどのように進めれば良いのか、先日APPLICで中間報告を取りまとめ、教育分野では主に3つのことを示しました。
1つ目は、基本的に文科省が昨年示した中長期ビジョンにのっとりながら、学校と教育委員会や地域をまたいだ連携システムを目指すということ。2つ目は、ベンダーが異なっても一体のものとして連動・動作でき、かつ同時に他地域ともやりとりのできるシステムにすること。3つ目は、教育委員会側からでなく情報政策課などの首長部局側からも予算やビジョンを提示して教育委員会と連携が取れるよう、整備のための具体的なガイドラインを策定することです。
セキュリティポリシーをせっかく策定しても、それが学校の実情にそぐわない場合、受入れられないところもある現状です。そうした行政と教育現場の乖離を解消するため、「教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)」では、メンバーに教育委員会の指導主事をはじめ、指導主事の経験を持ちながら現在現場で活躍している教員、また一般教員や校長先生、さらには事務職員の方々が参加しています。
使い易さとセキュリティはトレードオフの関係にあり、どこで折り合いをつけるのかも大事。現場の実情に合わせて判断しなければなりませんが、これまでその判断材料がありませんでした。そこでISENでは、現場に近い教育関係者で情報交換を行い、それぞれの地域の整備状況など様々な状況に応じた策定を可能にするケースの選択肢を示していこうと思っています。
12月23日に行うセミナー(関連5面)ではワークショップ型研修も行いながら参加者同士の情報交換の場を設ける予定です。是非多くの教育関係者に参加してほしいですね。
(西田 理乃)
【2007年12月1日号】