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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」32

教員が容易に
コントロールできるITを

  ── 「シンプルな機能・使い勝手」にニーズ
東京大学大学院
栗原 一貴 氏

東京大学大学院 栗原 一貴 氏
 千葉県総合教育センターの小中高の先生らと共に開発を進めてきた授業・プレゼンテーションツール「ことだまレクチャー(以下ことだま)」。マウスや電子ペンだけで編集や発表ができ、キーボードが苦手な先生でも即使えるという。同センターでは2004年度から2年間「ITを活用した分かる授業≠フ実践」を研究しており、栗原さんは「黒板のように使えるソフトがほしい」という現場教員の要望に応える形で研究開発を行ってきた。

 既存のプレゼンソフトはスライド式のため「集中して説明するのには向いているが、途中で深めたり寄り道したり、最後に俯瞰するには不便」という教員の声から、スライドを切り替える形ではなく、一枚の模造紙に書き込み、簡単に場所を移動したり拡大縮小したり、画像や動画などの資料に切り替えられるようにした。
 
 「何パターンか制作、教員ニーズがある機能だけを抽出し、最終的には非常にシンプルなものになりました。『ことだま』を使った授業は、画像やWEBコンテンツなどを利用する授業での活用が便利なようです」
 例えば「焼畑農業」について学ぶ高校の授業では、焼畑農業の様々な写真をレイアウトし、生徒らの意見交換を行った。資料映像もワンクリックで投影、手書きで書き込みも出来るので、各班の考えを書き込み、かつ最後に俯瞰することができる。

 中学校の理科の授業では、実験結果についてまとめたグラフをその場で教員がデジカメで撮影、画面に画像を貼り付けて各班のグラフの比較を行った。

 「従来のプレゼンソフトでも授業時間内にこのような編集活動を行うのは不可能ではありませんが、授業の流れを中断してしまいます。『ことだま』は、プレゼンソフトの枠を取り払い、シンプルさを保ったままで書き込みや移動などができるよう、自由度を上げています。いつでも全体を俯瞰できる点も先生にとって重要な機能です。定規やチョークのように、模造紙のように、使い方に想像の余地があり、しかも便利で効果的、そんなツールとして提供していきたいですね」

 授業の方向性を決めるのは教員だ。その教員が容易にコントロールでき、授業に組み込むことができなければ、地に足のついたテクノロジーとは言えない。

 「今後は、ダウンロードしなくても使えるようにWebアプリケーション化したいですね。そうすれば生徒達も自由に使うことができますから」
 「ことだま」は千葉県総合教育センターのサイトから無料でダウンロードできる。5月1日から公開、口コミで拡がり現在268件のダウンロードがある。

(取材 西田理乃)


【プロフィール】 

東京大学大学院情報理工学研究科
コンピュータ科学専攻 
五十嵐研究室所属 博士後期課程 
http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/~qurihara/

【2006年8月5日号】