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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」30
テクノロジーは基礎学力
のようなもの
  ──技術を尊び、愛する気持ちを育む
サイボウズ株式会社 代表取締役社長
青野 慶久氏

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久氏
 今、高度なIT人材育成やビジネスモデルを創造できる人材の育成が急務とされている。青野慶久代表は、松下電工入社3年後に退職、仲間3人でサイボウズ鰍設立。いまや日本国内のシェアでは1、2を争うグループウェアの代表だ。目標は「世界の65億人がサイボウズを使うこと」という青野氏に、成功の秘訣とこれから必要とされる人材について聞いた。

 「会社を作ることが目的だったわけではなく、新しい技術を使ったWEBベースのサービスを皆に広め、便利だね、と言ってもらいたかった。それを松下で実現するのが無理だったので、サイボウズが生まれたんです」。

 会社設立後2か月で黒字転換した。グループウェアでは大手を抑え、そのシェアが1、2を争うようになったサイボウズだが、それについて青野氏は「これまでは難しくて高価でも、それなりのユーザーがついていました。これからは、使い勝手は簡単かつ低価格なことが必要。サイボウズは当初より大衆化を目指しており、低価格で使い勝手の良いグループウェアとして浸透してきました。その結果シェアも増えてきたのではないでしょうか」。

 使い勝手が簡単でも、裏で働かせているテクノロジーが簡単なもの、というわけではない。

 「技術は、基礎能力のようなもの。技術があるのは当たり前で、それを使ってどうやって人を楽しませ、あるいは生活を便利にしていくのか。サーカスのピエロと同じで、技術がなければ人を楽しませ、感動させることはできません」。

 理系離れが懸念されており、未来の日本の技術者不足が心配されている昨今だ。

「学生の理系離れ、悔しいですね。あらゆる人が高度なテクノロジーを身につける必要がある、というわけではありませんが、技術を尊び、愛する気持ちは必要です。それがあれば、この国のテクノロジーは廃れません。技術者の能力を育みやすく、発揮しやすい環境作りはそこから始まります。それが、技術者以外の人たちの仕事ではないでしょうか」。

 ネットの危険性から学校教育では導入や活用に慎重にならざるを得ない面がある。それについて青野氏は「技術に人間が追いついていく、という流れは確かにありますが、新しい道徳観は、新しいテクノロジーから生まれています」と述べる。学ぶ人がリーダーとなる、という図式は、考えてみれば当然のことといえる。

 「テクノロジーで勝負していると、世界が近い。テクノロジーは世界共通の言語といえます。グローバルに活躍したいのであれば、テクノロジーを学べば良い。テクノロジーを身につければ、どこでも勝負できますよ」。
(西田理乃)


【プロフィール】
大阪大学工学部情報システム工学科卒。
1997年サイボウズ取締役副社長。
2005年代表取締役社長。
社長ブログ http://blog.cybozu.net

【2006年6月3日号】