デジタルコンテンツ制作に関わる有能な人材の輩出を目的に、専門スクールデジタルハリウッド(以下デジハリ)のノウハウを生かし、大学院を設立して3年、大学を設立して2年を経た。杉山知之学長に、これから必要とされる人材とその能力について聞いた。
「デジタルコンテンツ産業では実力と経験がモノをいうので、これほど転職がラクな職業はない。会社の倒産などに影響されることなく今の自分のキャリアがすべてプラスになるという点では、堅実といえる」と杉山学長は述べる。
今、デジタルコンテンツ産業の中心は、「ゲーム」だ。ゲーム業界ではビッグプロジェクトが行われ、大きなプロジェクトに優秀な人材が集まり、結果会社から人が抜け、新人が入る余地が生まれ――と、いい意味での活性化がスムーズに起こっているという。
「これまでのコンテンツ産業は、職人気質が幅をきかせ、ビジネスとして幼稚な部分があった。これからは、ビジネスとして成熟させる必要がある。そのためも、ビジネスプロデューサー育成が急務」。現在、院には在籍数144人、今年の修士号取得者は49人。「平均年齢は30代。しかも今年の卒業生の主席は43歳。皆、それなりの実力を持ってやってくるので、基礎体力が高くモチベーションも高い」。
では、ビジネスプロデューサーとは具体的にどのような存在なのか。
「ひとつのコンテンツを制作する際、映画化、ゲーム化、テレビ放映、DVD化、ノベライズなど、放送・映像・出版・インターネット等全てのジャンルを融合してプロデュースできる存在」と杉山氏は述べる。
デジハリが目指す「ビジネスプロデューサー」とは「自分の『知』を通じてコミュニケーションし、人を説得し、かつ相手の『知』とうまくコラボレーションすることができる人。そのためには、何かひとつのジャンルに『精通』している必要がある。単なる『物知り』では人を魅了したり説得したり感動させるなど、周囲に影響を与えることはできない。全てに精通している必要はないが、テクノロジー始め様々なジャンルをある程度知っている必要もある」と述べる。
「地頭が良いことは、必要。でも、単なる知識の所有者であるだけでは駄目。自らの立ち位置をはっきり持ち、そこから様々な情報をキャッチしていける人材が必要だし、そのような人材育成を目指している」。
院生による「ビジネスプラン発表会」では、「ITによるニート対策」「スポーツ特化型SNS」「原作マーケットプレイス」ほか魅力的なビジネスモデルが並んだ。
「ヒットを生める人材育成を考えて初等中等教育を行うのであれば、ひとつはコミュニケーション能力の育成。もうひとつは、好きなものを見つけて追求していくことに評価を与えることでは」。
(西田理乃)
【プロフィール】
工学博士。
デジハリ学校長。
CG―ARTS協会、デジタルコンテンツ協会ほか多数の委員を歴任。
94年デジタルハリウッドを設立。
【2006年5月6日号】