「将来のスーパーSE、IT職人」発掘養成支援として経済産業省が2005年4月公募を開始した「ITクラフトマンシッププロジェクト」。初等中等教育段階でのIT人材育成土壌を作ることが目的だ。同プロジェクトに採択されたのは全28件の応募のうち15件。東京農工大並木助教授は、大阪府の企業及び高校生とチームを組み、採択を受けた。テーマは「高校生が作る携帯Javaアプリケーション」。同プロジェクトの活動内容とそれを通じて感じた未来のスーパープログラマ・SE育成の可能性について聞いた。
「日本の携帯電話の普及率は、とにかく高い。しかも、モバイル環境(持ち運び可能)で、ユビキタス(どこにでもある)。これを生かすことのできる携帯電話プログラミングの『匠』『職人』育成を目指し、『携帯Java実行環境で稼動するプログラムの開発を行える能力を育成する』ことを目的にプロジェクトを立ち上げました」。
当初はJava経験のある高校生を公募したが、応募してきたのは1人だけ。そこで、プログラミング経験のある高校生と、その応募範囲を拡大したところ、男子4名女子3名、計7人が集まった。
「7人はすべて私立の学生で、しかも情報教育に熱心な学校の生徒でした。彼らのレベルにあわせ、プログラミングについて10時から17時までびっしり3日間を講義に費やし、最終的には実際に携帯電話で可能な限り動く学習ソフトを作成、プレゼンテーションにより各自報告してもらいました。非常にヘビーなプロジェクトでしたが、スキルや素質がある生徒であればハードなプロジェクトにも耐えることができるものですね。彼ら7人に学ぶチャンスと刺激を与える、という役割は果たすことができました」とその成果を語る。
実際に7人が作成した学習ソフトは、ドリル式の「英単語学習ソフト」や、地理や歴史を学習できる「3択すごろく」、英単語学習ソフト、漢字当てゲーム、オセロのようなゲームソフトなど。完成度が高いもの、完成にいは至らなかったものと様々ではあったが、限られた時間の中よくここまでできた、というレベルにまで到達した。
「プログラミングもスポーツや音楽と一緒で、低年齢時に経験させておくか否かです。全員がプロスポーツ選手になるわけでも音楽家になるわけでもないけれど、ひととおり音楽も体育も学ぶでしょう。プログラミングもそれと同様に、文系理系関係なく学ぶ機会を与えていきたいですね」と述べる。与えるべき言語については議論の分かれるところだが、並木氏は「低年齢時に与える言語は、能力に応じたものであれば何でも良いのです。Javaの経験以上に、アルゴリズムをわかっているか否かは大きな差となります。プログラミングの基本に対する機会は、ぜひ積極的に与えていきたいですね」と結んだ。
(西田理乃)
【プロフィール】
工学博士
東京農工大学工学部情報コミュニケーション工学科情報工学講座
計算機システム工学助教授
専門はシステムソフトウェア・データベース工学・プログラミング
【2006年4月8日号】