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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」24
半導体のデザイナー養成急務
  ──日本の世界的地位守るために
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(株)
社長 高橋 恒雄氏

高橋 恒雄氏
 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社は2004年にモトローラ社より独立、世界をリードする半導体のデザイン設計と販売を業務とする新会社としてスタートした。同社の半導体デザインセンターでは、全世界に影響を与えるデザインが日々考案されている。同社は今後、社会貢献と人材育成について積極的に取り組んでいく。前インテル取締役兼通信事業本部長であり、フリースケール本社副社長兼フリースケールジャパン代表取締役の高橋恒雄氏にその目的と方策について聞いた。
 「半導体」は、コンピュータのCPUやメモリ、携帯電話など身の周りのあらゆるものに使われている要の部分です。パワーステアリングも愛玩ロボットの動きも、デジタルカメラや携帯電話がより小さくかつ高性能になっていったのも、全て半導体の進化によるものです。

 半導体を製造する前段階の電子回路を設計する工程を「半導体デザイン」と呼んでおり、その一翼を担うのが、仙台市にあるフリースケールのデザインセンターです。ここで、世界を変えていく先進のデザインがされています。これだけ大規模なデザインセンターを持つのは、外資半導体では稀。規模的にも人材的にも世界に誇れるデザインセンターと言っていいでしょう。

 これまで日本は半導体ビジネスにおいて、世界のトップランナーでした。半導体は、より小さく、かつ精密になっています。自動車を始め、あらゆるデジタル家電には、この半導体が欠かせません。このデザインを手がけるには、多くの優秀な人材が必要です。しかし今、半導体をデザインしたり、ソフトウエアを書ける人材が、圧倒的に足りない状況にあります。現在このような業務をインドや中国に発注している状況です。

 日本を支えていける資源は、今のところ科学技術以上のものはありません。その唯一の資源が枯渇しようとしているのですから、大変深刻な問題です。これまで日本が築きあげてきた最先端技術を継承・発展させていくことができる、優秀な人材層が、どんどん薄くなってきており、このままでは、数年後には中国やインドに追い越されてしまうのは目に見えています。高度なIT人材の早急な育成が必要であり、これは日本の産業界共通の大アジェンダといえます。

 その一方で、数年前より中学高校や大学などから工場見学の申込が増えてきています。当社では可能な限り対応しておりますが、今後は一歩進み、良い人材を発掘、育成と理科離れ阻止を目的とし、科学技術に触れる機会や知識を提供していこうと、親子セミナーや、小中高生向けの夏休みセミナーなど社会貢献事業を企画、実施を開始しています。

 今回実施した親子セミナーは、「親がハイテクノロジーの世界で最先端の仕事で働いていることを子どもらに意識させ、刺激を与えたい」と考え、企画したものです。

 今後は親子セミナーから発展させ小学生向けに「半導体」がどこにどのような形で役立っているのかなど、具体的イメージを持てるよう知識ベースで伝えるセミナーや、中高生向けに、半導体のプログラミングを含めた工作を体験させ、その面白さを伝えるセミナーなども実施していく予定です。さらに大学では、より具体的に共同研究やインターンシップ受け入れの強化を進めていきたいと考えております。
 (取材 西田理乃)

<プロフィール>
 高橋 恒雄
 ・大手精密機械メーカー研究開発職、インテル株式会社取締役兼通信事業本部長を経て2004年6月より現職。

【2005年11月5日号】