私が担当している科目は,もともと夜間に開講していた面接授業を学生さんが受講しやすいようにネット授業に切り替えたもので,当然開講当初から単位も認定しています.同一科目を面接授業と遠隔授業の両方でやってみれば,その科目に対する遠隔授業のニーズや適否は歴然とします.通学制大学における遠隔授業は,ニーズ主導でなければ成功しないと思います.売り手市場的な発想では現在のようには定着しなかったでしょう.
遠隔授業で取得できる単位数は制度上60単位までですが、これは卒業に必要な単位数のほぼ半分にあたります.これからは,例えば1,2年生の間はキャンパスで面接授業を受講し,3,4年生時には実家でインターネット授業を受講する,といった就学形態に発展する可能性があるわけです.
遠隔授業では教員の教育力向上という効果も見逃せません.毎週自らの授業をビデオ撮りしコンテンツ化するプロセスは,授業の自己点検・評価そのものです.授業の質が上がり,結果として学生さんの成績の向上につながっているのだと思います.
eラーニング時代には,これまでほとんど行われてこなかった教育面での教員評価が重要視される面もあります.「インターネット授業」のランキングが公表されるのは時間の問題といえるでしょう.これまでまるで「福袋」のように中身がわからなかった大学の授業が比較されるわけです.
eラーニングを特別視するのではなく,「授業形態の選択肢が増えた」ととらえることが重要だと思います.板書による面接授業でもさまざまな工夫や熟練が必要ですが、ITも同じこと.大学における教育サービス向上のための努力のひとつとして「eラーニング」というメニューを充実させていくことが必要ではないでしょうか.
「学校ITは学力にどんな影響を与えるのか」
●ネット世代が求めていた教育サービスが提供されることで、学習意欲や学習効果が高まる。
●授業の自己点検・評価につながり、教員の教育力が向上する。
●授業内容の透明性が高まり、競争的環境で授業の質が高まる。
<プロフィール>
宮崎耕 (みやざき こう)
・1988年神戸大学大学院経営学研究科博士課程(前期課程)修了、
神戸大学経済経営研究所国際経済経営環境研究部門教官を経、現職。
近年は高等教育における情報教育カリキュラムやITを活用した教育サービスの高度化について取り組む。
【2004年9月4日号】