教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
 TOP教育マルチメディアインタビュー記事         
バックナンバー
INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」12
世界に誇れる科学技術を
電気通信大学
岡本敏雄教授
電気通信大学 岡本敏雄教授
 「骨太な情報教育」の確立をねらいとし、「日本情報教育開発協議会(以下JADIE)」が平成16年6月、設立した。同協議会会長を務め、情報教育の中心的役割を担う岡本敏雄教授に、その設立の趣旨とねらいを聞いた。

■高校時代に“骨”(技術)を確立
 「教科『情報』が高校の科目として独立した。『情報』はもはや、これからの社会で積極的に生きていくための基礎学力。JADIE設立の目標のひとつは、教科『情報』の基礎となるべき骨太な情報教育のあり方を、学会とは異なる実践的立場から検討・確立すること。教科『情報』でどのような力を育成し、どのような学力を保証していくのかを明確にし、内容とカリキュラムを検討していきたい」。

 では「骨太な情報教育」とはどのようなものか。

 「“骨”とは、情報通信技術の科学的・技術的な面での理解と、その考え方を身に付けることと捉えたい。情報技術の様々な利用・活用方法は、いわば“肉”の部分。小中学校では“肉”の部分から入り、情報技術に慣れ親しむ方法で良いが、敢えて教科として独立させた高校段階では“肉”ではなく“骨”の部分を確立させるべき」と述べる。

 「情報」には様々な切り口がある。「メディアリテラシーや情報倫理、様々な利活用法も、もちろん重要な要素。しかし、これだけインフラが整うと、利活用の初歩は家庭や個人でごく自然に行っている、というのが現状。高校段階で教科として『情報』を設定した意味は、『情報』社会を構築する基礎となる技術や考え方を理解し、その後の社会の変化に対応しつつ能力を発揮できる人材の育成にあると考えたい。日本が世界に誇れるものは、科学技術だった。未来もそうあるためには、教科『情報』の確立が急務。高校段階で情報通信技術の原理を理解しておけば、大学で文系に進んだとしても、それを応用し、時代の流れに対応して利活用していくことが可能になるはず」。

 現在、教科「情報」にはA、B、Cがあるが、岡本氏は「情報B※を必修とし、その上でAとCを選択とすること、現在は必修2単位だが、それを将来的には4単位とすること」を推奨したいと考えている。

 さらに今後については「情報通信技術を活用した異文化交流の事例は既にあるが、それにとどまらず、各国の通信方式の違いや技術教育の違いなど、『テクノロジーと社会を題材にした交流学習』の実施に力を入れても良いのでは。“骨”が確立できれば、数学オリンピックのように、『情報オリンピック』が世界規模で実施できるはず」と、今後の可能性を示した。※コンピュータにおける情報の表し方や処理の仕組み等を理解させ、問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための科学的な考え方や方法を習得する

「学校ITは学力にどんな影響を与えるのか」
 〇高校時代に情報技術の仕組み、役割や影響を理解することが、情報教育の「骨」となる
 〇高校時代に「骨」を形成することで、それ以降の利活用や新たなアイディアが生まれる
 〇日本が世界に誇れる「科学技術」のためにも教科・情報・の確立が急務である


<プロフィール>
 岡本敏雄  (おかもと としお)
・電気通信大学大学院情報システム学研究科教授
 東京学芸大学大学院修了・工学博士。
 教育システム情報学会会長、
 ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」評価・助言会議委員、
 e−Learning World実行委員長。




【2004年8月7日号】