H18年度からの大学入試センター試験の出題教科・科目や出題方法等についての「中間まとめ」で出題科目として予定されていた「普通教科『情報』」だが、最終報告によると、しばらくは見送られることとなった。学校の「情報」化が進展していくにつれ、児童生徒らに求められる「力」の変化が起こっている。現在の流れと今後の予測について辰己氏に聞いた。
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高校に、教科『情報』が導入されて1年が経とうとしている。
「そろそろ大学入試で教科『情報』をどう扱うかがについて発表されてくるころです。センター試験や東京大学など一部大学では、2006年度の入試で情報を試験科目にしないことを既に発表しました。しかし、それ以外の大学からはまだ何も発表されていません。高校の先生は注意が必要です。」
「情報」が入試科目として導入されるとすると、どのような形になるのか。
「『必修』にするのか『選択科目』にするのか、『選択科目』とすると物理との選択になるのか、あるいは数学との選択になるのか。大学全体で「情報」を出題するのか、情報系の学部・学科で出題するのかも不明です。関連する大学の先生のほとんどは、他の大学の様子を見ながら手探りの状態だろうと思います。
また、新指導要領では全ての教科に『情報』という観念を入れたので、例えば政治経済や公民の中に著作権関係などの情報系の問題が出てくる可能性も否定できません」。
平成15年6月4日・独立行政法人大学入試センター発表によると、「普通教科・情報」については、「高等学校における教育の実態等を十分に踏まえる必要があるため、出題の可能性について引き続き検討する」こととし、平成18年度から当分の間は出題の対象としないという決定だ。ただし専門教育を主とする学科における履修科目の出題について配慮することを基本的方針としており、『情報関係基礎』は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報及び福祉の8教科に設定されている 情報に関する基礎的科目を出題範囲とされている。
今、問われる学力・必要とされる学力が変わってきている。それと呼応し、入試にもその変化は確実にやってくる。スタンダードの形は分からないが、必ず何かが変わっていくことは確かだ。
学校の情報化の中で、必ず問題になるのが「セキュリティ」の認識と、「個人情報」漏洩問題などの「リスクマネージメント」だ。気軽に掲示板に書き込む、サイトに登録する、HPを立ち上げる等、児童・生徒らの行為はあっという間にリスクにつながる行為となる。
「生徒たちに、ネット上のどこでどんな犯罪が起こっているのかを教えることは必須です。効果的なのは、通常の授業の合間や雑談の時間などに、数分程度で、先週どこでどんな事件が起きたのかをリアルタイムで伝えることが必要です。先生方も、web掲示板やインターネットに関連した事件などについて敏感になっておいたほうがいいでしょう。それが、学校のリスクマネージメントの一つにつながると思います」。
「学校ITは学力にどんな影響を与えるのか」
● 求められる力の質的変換が起こる
● それに伴い大学入試科目に変化が現れる
● リアルな情報を頻繁に提供することがリスクマネージメント力に繋がる
<プロフィール>
東京農工大学総合情報メディアセンター助教授
神戸大学発達科学部助教授(併任)
早稲田大学・長野大学・東京大学・放送大学大学院で非常勤講師。
専門は、情報倫理、情報教育、情報危機管理、数学教育の情報化。
情報処理学会「高等学校の教科『情報』の試作教科書プロジェクト」などに参加。
情報処理学会コンピュータと教育研究会幹事。
【2004年3月6日号】