■ 専門教科「情報」の設置で
「情報教員加配措置」の活用を
2003年より高等学校において普通教科「情報」及び専門教科「情報」が開始した。本年4月より教科調査官に就任した永井氏に、今年度の動きとこれからの展望について聞いた。
「現在、普通教科『情報』の実施状況は調査中であり、各科目の履修状況の具体的な数字はまだ出ていないが、教科書の需要数である程度の数が把握できる。
今年度の『情報A』の教科書の需要数は約60万冊、『情報B』及び『情報C』は各約6万冊。単純に計算すると、今年の3月に中学校を卒業した生徒数約132万人のうち、約半数に普通教科『情報』の教科書が割あたっている計算になる。また、全ての学校で1年次より普通教科『情報』の開始を設置しているわけではなく、専門学校に進学して専門教科『情報』を学ぶ生徒もいるため、今年度の高校1年生の、約半数以上の生徒が何らかの形で教科『情報』を学び始めている、と考えることが出来る」。
今年度、普通教科「情報」の科目を設置している高校では、多くの学校が「情報A」を設置している。この点については、「『情報A』は、中学校でコンピュータ等の活用経験が浅い生徒を視野に入れた内容になっており、『情報A』の履修が他に比べて多いの予想されていた」と述べる。
■研修の内容と方法が変わってきた!
年一回開催される「全国情報処理教育センター指導者協議会」は、各教育センターがどのような研修を行い、どのような成果を上げているのかを情報交換する場だ。永井氏は今年7月、教科調査官として初参加し、「教員研修の内容がシフトされつつある。PCのスキルトレーニングから活用方法に軸足が動いてきている」と感じたという。
さらに研修のスタイルの変化にも注目している。「いくら良い研修を行ったとしても、参加出来なければ意味はない。これからは、e-Learningを活用した研修が考えられる。遠隔で研修を行うことで、質の高い研修を適時に実施することが出来るだろう」。
研修の講師を、参加者に決めさせる県もあったという。これまでの研修内容や方法からの脱皮が計られている。
永井氏は、自らの役割の一つを「現場の教員や教委・教育センターの声を文科省の担当局に伝えること」と言う。しかし、それだけではなく、教員は教委やセンターに、教委やセンターは文科省に要望や意見などを、直接伝えることも重要だ、と述べる。
■ 「実習助手」専門教科と普通教科では
管轄する法律が違う!?
例えば、普通教科「情報」に関わる実習助手の配置の問題だ。
現場からは「実習助手をもっと配置してほしい」という声が大変多い。
その点は永井氏も把握しており、初中局には、機会あるごとに要望として伝えている。しかし、簡単には実現しない。情報に関する専門学科の教員及び実習助手の加配措置は政令改正により措置が可能であり、要望から実現までスピーディだったが、普通教科「情報」に関わる実習助手の加配の場は、高校標準法関係法令の構造上、法律を改正しなければ措置は不可能だ。同じ学校で働く教員ではあるが、管轄する法律が違うのだ。
法律を変えるには、手続きと時間がかかる。「しかし、校長会など、複数の場所から声が上がれば、実現不可能、というわけではない」と言う。
■ 専門教科「情報」に関わる学科を設置すれば
教員の数が増える!
もう一つ、アイディアがある。専門教科「情報」に関わる学科を設置すれば、学科をひとつ増やしたことにより、教員の数が増えるのだ。
専門教科「情報」はネットワークを設計・管理・運営したり、マルチメディアを主軸とした新しい産業を担う人材の育成を目標にして作られた。ところが今年度、専門教科「情報」を設置した学校数は、全国で7校のみと、かなり控えめな数字だ。一方、普通高校や総合高校が普通教科「情報」を設置、1年次で「情報A」を履修するが、2〜3年次の選択科目で「情報B」や「情報C」ではなく、「マルチメディア表現」や「情報と表現」など、専門教科「情報」の学科を履修できるようにしている学校が、予想以上に多い、という側面がある。
永井氏は「この流れが拡大すれば、普通高校や総合高校にも、部分的に専門教科『情報』関わる学科が設置されていく可能性もある。教員の加配措置を各学校への支援策の一つと捉え、専門教科『情報』を設置する学校の今後の増加を期待したい」と述べた。